目次
はじめに
この記事では、聞く力(傾聴力)を楽しく、かつ効率よく鍛えるトレーニングゲームを紹介します。子ども向けから大人向けまで、教育現場や家庭、ビジネス研修などさまざまな場面で使える具体的なゲームやアクティビティ、その効果や実施時のポイントを分かりやすくまとめました。
想定読者:保護者、教員、研修担当者、そして日常の対話をよりよくしたいすべての方。
この記事で得られること:
- 聞く力の大切さとトレーニングの基本が分かります。
- 年齢や場面に合わせた具体的なゲームと進め方を学べます。
- 実施時の注意点や効果を高めるコツが分かります。
構成について:第2章で「聞く力とは何か」を説明し、第3章は子ども向け、第4章は大人向けのゲームを紹介します。第5章で効果とポイントを整理し、第6章で日常に取り入れやすいおすすめゲームを挙げます。順に読み、まずは気軽に一つ試してみてください。続けることで、確かな変化を実感できるはずです。
聞く力(傾聴力)とは?
「聞く力(傾聴力)」とは、相手の話をただ聞き流すのではなく、集中して内容と気持ちを理解し、必要な情報を整理しながら反応する能力です。単なる“聞こえる”と違い、“理解して応答する”ことを重視します。
主な要素
- 注意を向ける:目線やうなずきなどで相手に関心を示す
- 内容を理解する:事実と感情を分けて受け取る
- 要点を整理する:重要な情報を抜き出してまとめる
- 反応する:要約や確認の質問で意図を確かめる
具体例
- 学校:子どものつまづきを見逃さず、どの部分が分からないか確認する
- 家庭:悩みを聞くときに結論を急がず共感を示す
- 仕事:会議で発言を要約して認識合わせを行う
効果と注意点
聞く力があると信頼が生まれ、誤解や手戻りを減らせます。一方で自分の意見をすぐ挟む、助言を急ぐ、スマホで気が散ると効果は落ちます。まずは相手の言葉を繰り返して確認し、短い沈黙を恐れずに聞く練習から始めてみてください。
子ども向け:楽しく身につく聞く力トレーニングゲーム
はじめに:遊びながら聞く力を伸ばすことは自然で効果的です。ここでは教室や家庭ですぐできる簡単なゲームを紹介します。
伝言ゲーム
- 準備:人数は4人以上、短いフレーズを用意します。
- やり方:最初の人が隣の人に小さな声で伝言を伝え、最後の人が声に出して伝えます。
- 年齢・時間:4歳〜、小〜中学生向け、5〜10分。
- 効果:注意深く聞く力、記憶力、言葉の順序を意識する力が育ちます。
- 工夫:絵を使う、ジェスチャー禁止ルールを加えると難易度を調整できます。
指示通りにお絵かき
- 準備:紙と色ペン、指示カード。
- やり方:一人が口頭で指示(「左上に青い丸」など)を出し、他の子がその通りに描きます。最後に見比べます。
- 年齢・時間:5歳〜、10〜15分。
- 効果:語彙理解、空間把握、情報を順序立てる力が高まります。
- ヒント:指示は短く明確に。難しい言葉は言い換えて説明します。
マジカルバナナ
- 準備:円形に座るだけ。
- やり方:「りんごと言えば赤」と言いながら連想を続けます。テンポよく行うのがポイントです。
- 年齢・時間:4歳〜、5〜10分。
- 効果:即時反応力、語彙の連想、集中力が養われます。
どこにいるかなゲーム(聞き取り版)
- 準備:室内の隠れ場所をいくつか決める。
- やり方:一人が隠れて、ヒントを音だけで伝えます(例:物の音を鳴らす)。聞いて当てます。
- 年齢・時間:3歳〜、10分程度。
- 効果:音情報を手がかりにする力、観察力、推測力を育てます。
実施のポイント
- 説明は短く分かりやすく伝える。
- ほめて成功体験を作ることで意欲が高まります。
- 難易度は年齢やその日の様子で調整してください。
大人向け:傾聴トレーニング&チームビルディングゲーム
二人一組の再話ゲーム
- 目的: 注意深く聞き、要点を再構成する力を育てる。
- 人数・時間: 2人1組、1回あたり5〜10分。
- 手順: Aが3分ほど話す。Bはメモを取らず聞く。Bは相手の話を自分の言葉で再話する。最後にAがフィードバック。
- ポイント: 感情や意図を含めて伝えること。正確さより理解を優先。
- 注意点: 批判せずに聞く環境を作る。
聞き手のミステリーゲーム
- 目的: 質問の質を高め、相手の背景を深掘りする練習。
- 人数・時間: 3〜6人、20〜30分。
- 手順: 1人が短い出来事を話す。他の参加者は制限された数(例3問)の質問で真相を推理する。聞き手はオープン質問を使う。
- ポイント: 具体的な問いを立てる。聞いた情報を繰り返して確認する。
ストーリー繋ぎゲーム
- 目的: チームで聞き合い、想像力と共感を高める。
- 人数・時間: 4〜10人、15〜30分。
- 手順: 最初の人が一文話す。順に一文ずつ続けて物語を作る。途中で前の内容を要約してからつなげるルールを入れる。
- ポイント: 相手の発言を受け止めてから続ける。
ミステリー・ゲーム(グループ推理)
- 目的: 全体の情報を統合する力を高める。
- 人数・時間: 6〜12人、30〜45分。
- 手順: 複数の証言カードを配り、チームで情報を共有・整理しながら事件の真相を推理する。
- ポイント: 発言を引き出すファシリテーションを行う。要点をホワイトボードにまとめる。
オレンジゲーム(交渉型傾聴ワーク)
- 目的: 傾聴を通じた交渉力と共感の実践。
- 人数・時間: 2人1組または小グループ、15〜25分。
- 手順: 一つのオレンジを分けるという設定で、各自の要求を話す。聞き手は相手のニーズを掘り下げ、妥協案を一緒に作る。
- ポイント: 利害ではなくニーズを聞く。合意形成の過程を可視化する。
- 注意点: 感情が高ぶる場合は一旦休憩を入れる。
各ゲームは振り返り(フィードバック)を必ず行ってください。振り返りで学びが定着します。
聞く力トレーニングゲームの効果・ポイント
学びと遊びが結びつく効果
ゲーム形式は参加者のモチベーションを高め、集中力を持続させます。遊びながら反復できるため、「聞く」「話す」「伝える」を同時に鍛えやすく、学んだことが日常で使いやすくなります。たとえば、ロールプレイでの振り返りを繰り返すと、会話の中で相手の要点を素早くつかめるようになります。
年齢別の期待される効果
- 子ども:注意力や語彙力、場面に応じた反応力が育ちます。ルールのあるゲームで社会性も身につきます。
- 大人:傾聴力に加え要約力や質問力が向上します。職場の会議や面談で効率よく情報を引き出せるようになります。
実践時のポイント(すぐ使える)
- 目的を明確にする(例:要点を3つにまとめる)
- ルールは短く、フェアに(時間や発言回数を決める)
- フィードバックは具体的に(良かった点と改善点を一つずつ)
- 難易度を段階的に上げる(短い話→長い話→感情表現あり)
- ポジティブな雰囲気を保つ(失敗を学びに変える)
効果を測る方法
簡単な自己評価シートやペアのフィードバック、ゲーム前後での振り返りを使うと効果を把握しやすくなります。具体例として「相手の要点を何件正しく答えられたか」を数える方法があります。
注意点
無理に競争を強めると学びが薄れる場合があります。個人情報や感情の扱いに配慮し、安全な場づくりを優先してください。
まとめ:日常で取り入れやすいおすすめゲーム
以下は場面別に取り入れやすいゲームと、実施のコツをまとめたものです。
家庭で(子どもと一緒に)
- 伝言ゲーム:ルールが簡単で短時間。言葉の聞き取りと再現力が育ちます。
- お絵かき伝言:口で伝える力と想像力を同時に鍛えられます。年齢に合わせてお題を調整しましょう。
学校・子ども向け
- ストーリーつなぎ:一人ずつ話を続けていく。集中力と聞いた内容を覚える力が高まります。
- 指示ゲーム(指示に従って動く):体を使うので飽きにくく、即時の聞き取り力が鍛えられます。
職場・研修(大人向け)
- ミステリー/推理ゲーム:情報を整理して聞く力と論理的思考を同時に刺激します。
- オレンジゲーム(交渉型):利害調整や傾聴、説得の練習に最適です。
オンラインで使える工夫
- 画面共有のお絵かきやブレイクアウトルームでの伝言ゲームなど、道具を工夫するとそのまま使えます。
実施のコツ
- 5〜15分の短時間を目安にする。
- ルールはシンプルにして参加しやすくする。
- 終了後に「何を聞き取れたか」を短く振り返る時間を設ける。
ちょっとした時間にゲームを取り入れるだけで、聞く力は確実に伸びます。まずは一つ、今週中に試してみてください。