目次
はじめに
この章の目的
この記事は、非暴力コミュニケーション(NVC)の「感情リスト」を丁寧に紹介するために書きました。感情リストが何に役立つか、日常の対話や自己理解でどう活かせるかをわかりやすく示します。NVCの基本やステップも触れながら、実践に役立つ情報をお伝えします。
誰のための記事か
- 自分の気持ちを整理したい方
- 相手と落ち着いて話したい方
- 職場や家庭での対話を改善したい方
忙しい方でも読みやすいよう、具体例と使い方を中心にまとめます。
本シリーズの流れ(全8章の概要)
本シリーズでは、まずNVCの基本と4つのステップを説明します。その後、感情リストの意義、使い方、具体例、活用事例を順に紹介します。各章は独立して読めますので、必要な部分から始めてください。
この記事で得られること
感情の言葉を正しく見つけられるようになります。自分の内面を伝えやすくなり、相手に共感を示す力が高まります。実際の会話で使えるヒントも紹介します。
NVC(非暴力コミュニケーション)とは何か
概要
NVC(非暴力コミュニケーション)は、マーシャル・ローゼンバーグ博士が提唱した対話法です。共感と自己理解を深め、互いの本音に気づくことを目的とします。相手を責めたり自分を責めるのではなく、感情とニーズに焦点を当てて話します。
起源と目的
ローゼンバーグ博士は暴力的な対立を減らすためにNVCを考案しました。対立を避けるのではなく、対立の背後にある人間のニーズを見つけてつなげる手法です。
4つの要素(簡単に)
- 観察:評価や批判を混ぜずに事実を伝える(例:"会議は10分過ぎています"
- 感情:自分が感じていることを表す(例:"不安です")
- ニーズ:その感情の根っこにある願い(例:"時間を守ってほしい")
- リクエスト:具体的で実行可能なお願い(例:"次回は5分前に来てください")
日常での違い(短い例)
- 非NVC:"あなたはいつも遅刻するから困る"(非難)
- NVC:"今、約束の時間を過ぎているのを見ました。私は不安を感じています。時間を守ってほしいです。次回は5分前に来ていただけますか?"
この章ではNVCの基本的な考え方と、日常でどう違うかをわかりやすく示しました。今後の章で詳しい実践法を紹介します。
NVCの4つの基本ステップ
観察(Observation)
評価や解釈を入れず、目に見える事実だけを述べます。例:「会議で発言の途中に話を遮られました。」という事実です。コツ:主語を自分にして「私は〜を見聞きしました」と言うと非難になりにくいです。
感情(Feeling)
自分がその状況で感じていることを正直に表します。例:「そのとき、私は悲しかった/困惑しました。」感情名を具体的に使うと伝わりやすいです。
ニーズ(Needs)
感情の裏にある大切な欲求を見つけます。例:「私は尊重されたい、話を最後まで聞いてもらいたいというニーズがあります。」ニーズは普遍的で評価しにくい言葉にします。
リクエスト(Request)
ニーズを満たすための具体的な行動をお願いする段階です。例:「次回は発言が終わるまで待っていただけますか?」と具体的に頼みます。リクエストは明確で実行可能にしましょう。
実践のヒント:各ステップを順に分けて話すと誤解が減ります。練習として、日常の小さな出来事で短い一連の表現を作ってみてください。
感情リストの役割と意義
感情リストとは
NVCで使う感情リストは、「今自分がどんな感情を感じているか」を具体的に言葉にするための道具です。単に「嬉しい」「悲しい」だけで終わらせず、もっと細かい語彙を並べることで内側が見えやすくなります。例:『嬉しい』の裏に『ほっとする』『誇りに思う』『感謝している』などがあるかもしれません。
自己理解の深化
感情を細かく言葉にすると、何が自分の心を動かしたのかが分かります。出来事と感情を結びつけることで、繰り返すパターンや自分の優先するニーズに気づけます。これは自分を大切にする第一歩です。
セルフケアの促進
感情が明確だと、どんな対処が必要か判断しやすくなります。例えば『疲れ』なら休息を、『焦り』なら段取りの見直しを選べます。感情リストは具体的なケア行動へつなげる橋渡しになります。
共感的対話の基盤
他者に自分の感情を伝えるとき、具体的な言葉は誤解を減らします。『怒っている』ではなく『傷ついて悲しい』と伝えると、相手は防御せず共感しやすくなります。結果として対話の質が高まります。
使うときの注意点
感情は混ざり合います。リストは診断書ではなく、気づきを助けるガイドです。ラベリングで自分を責めず、柔らかく確かめる姿勢で使ってください。
NVC感情リストの使い方
1)まず感情を探す
感情が湧いたらリストを開きます。自分の中で響く言葉を探し、「今いちばん近い言葉」を選びます。例えば「モヤモヤする」→「いらいら」「不安」「寂しい」など候補を比べます。言葉を選ぶと感情が明確になります。
2)言語化したらニーズを探す
選んだ感情の裏にある満たされていないニーズを考えます。例:"寂しい"の裏には"つながりたい"、"いらいら"の裏には"尊重されたい"があるかもしれません。具体的に「何が足りないのか」を短い言葉で書き出すと見えやすくなります。
3)場面別の使い方
- 対話:自分の感情と言葉を使って伝えます(例:「今、寂しいと感じています」)。相手の感情も一緒に探すと共感が生まれます。
- カウンセリング:感情リストで表現の幅を広げ、深いニーズにたどり着きます。
- 子育て:子どもの言葉が乏しい時に代わりに言葉を当ててあげます(例:「悲しいのかな?」)。
- 職場:感情を客観的に示し、問題解決や関係改善につなげます。
4)実践のコツ
- 完璧を求めず、まず似ている言葉を一つ選ぶ。
- 感情と言葉をセットで日記に書く。
- 相手に使うときは押しつけず「私メッセージ」で伝える(例:「私は〜と感じています」)。
これらの手順を日常で繰り返すと、感情の解像度が上がり、共感的なやり取りがしやすくなります。
NVC感情リストの具体例
感情語の例
- 満たされている時:嬉しい、感謝、安堵、満足、安心、穏やか、楽しい、興奮、誇り、好奇心
- 満たされていない時:怒り、悔しい、悲しい、寂しい、イライラ、不安、絶望、緊張、孤独、混乱、怖い
これらの言葉の使い方
感情語は自分の内側で起きていることを短く表す道具です。まずは一つの言葉を選び、その言葉が示す感覚に注意を向けてください。感情と考えを混同しないことが大切です。たとえば「無視された」と考えるのは思考で、「悲しい」「寂しい」は感情です。
具体的な表現例
- 自分に対して:「今、悲しいと感じています。つながりがほしいです。」
- 相手に伝える:「あなたの言葉で傷ついて、怒りを感じています。理解してもらえますか?」
ワンポイント練習
- 目の前の出来事を思い出す。2. 感情リストから一語選ぶ。3. その感情につながるニーズ(例:安心、尊重、つながり)を考える。繰り返すことで言語化が速くなります。
NVC感情リストの活用事例と効果
子育てでの活用
感情リストを使うと、子どもの言葉や行動の裏にある気持ちを見つけやすくなります。例えば、子どもが癇癪を起こしたとき「怒っている」「悲しい」「不安」のどれかを探し、まずはその感情を受け止めます。親は自分の感情も確認してから短い共感を返すと、子どもは安心して気持ちを表現しやすくなります。習慣化すると親子の信頼が深まります。
対人関係での活用
職場や友人との誤解は感情のすれ違いから起きます。感情リストで自分の正確な気持ちを言葉にすると、相手に伝わりやすくなります。例えば「最近、あなたの対応に困惑しています(困惑)」と伝え、具体的なニーズを添えると会話が建設的になります。言い方を練習すると衝突が減り、信頼が築かれます。
セルフケア・自己回復
日記やセルフトークで感情リストを活用すると、自分の内側を丁寧に観察できます。朝晩に3分、感じている言葉を選ぶだけでストレスのパターンが見えてきます。感情を認めることで自己受容が進み、気持ちの切り替えや自己肯定感の向上につながります。
実際の進め方(短い手順)
- 感情を具体的に選ぶ(例:寂しい、いらいら、不安)
- その感情の背景にあるニーズを探す(例:つながり、安定)
- 短い共感や要望として表現する
繰り返すことで習慣化し、効果が定着します。
効果の目に見える変化
- 衝突が減る
- 対話が深まる
- 自己理解が進む
これらは短期間でも感じられ、継続すると長期的な人間関係の質向上や心の安定に結び付きます。
まとめ・さらに深めたい人へ
NVC感情リストの要点
NVCの感情リストは、自分の「本当の気持ち」を見つけ、そこから生まれるニーズに気づくための道具です。感情を名前でとらえることで、反応的な行動を落ち着かせ、相手や自分に対する理解が深まります。日常の小さな場面で使うほど効果が出ます。
すぐにできる練習
- 毎朝1分で気持ちチェック:今日の自分の感情を3つ書き出す。
- 会話の後に振り返り:どんな感情が動いたか、その裏にあるニーズは何かを考える。
- 相手に伝える練習:非難ではなく観察→感情→ニーズ→お願いの順で一つ伝えてみる。
さらに学びたい人へ
書籍やワークショップ、オンラインのワークシートで多くの感情リストが手に入ります。初心者は簡単なリストから始め、自分用にカスタマイズすることをおすすめします。継続することで自己理解が深まり、人間関係が穏やかになります。小さな一歩を続けてみてください。