目次
はじめに
ナラティブアプローチは、相手の「語り」に耳を傾けながら、その人が抱える悩みや課題を整理し、新しい視点や行動につなげていく対話の方法です。
コーチングやカウンセリングと並び、ビジネス・教育・医療など幅広い場面で活用されるようになり、近年とても注目されています。
この記事では、ナラティブアプローチが初めての方でも「スッと理解できる」ように、専門用語をできるだけ使わず、自然な言葉でまとめています。
意味や特徴だけでなく、実践手順、具体例、ビジネスでの活用方法まで丁寧に解説していきます。
「相手の話をうまく引き出したい」
「部下や同僚との対話をもっと良いものにしたい」
「キャリア相談や1on1で役立つ方法を知りたい」
そんな方に、今日から実践できる学びをお届けします。
本記事は、以下の流れで進みます。
- ナラティブアプローチとは何か
- なぜ注目されているのか
- 基本ステップと実践のコツ
- 職場や相談現場で使える具体例
- メリット・デメリット
- 活用方法や質問テンプレート
読み進める中で、「こういう場面で使えるかもしれない」と感じていただければ嬉しいです。
それでは、まずはナラティブアプローチの基本から見ていきましょう。
ナラティブアプローチとは何か?

ナラティブアプローチとは、相手の「語り」や「ものごとの受け止め方」に注目し、その人が大切にしている価値観や、問題の背景にあるストーリーを一緒に整理していく方法です。
人は誰でも、日々の経験を自分なりに“物語”としてとらえながら生きています。この「語り方」には、その人の思い込みや不安、気づいていない強みなどが表れることがあります。
ナラティブアプローチでは、この語りを丁寧に聞くところから始まり、
「どんな背景があるのか」
「その言葉の裏に、どんな気持ちが隠れているのか」
を一緒に探っていきます。
難しい心理療法のように聞こえるかもしれませんが、日常のコミュニケーションでも活かせる、とても自然な対話方法です。
ナラティブ(語り)の意味とストーリーとの違い
ここで少し整理しておきたいのが、「ナラティブ」と「ストーリー」の違いです。
- ナラティブ(語り):個人が体験をどう受け止め、意味づけているか
- ストーリー:出来事そのものや起きた事実の並び
同じ出来事でも、「どう語るか」によってその人の考え方や行動に大きな違いが生まれます。
たとえば、仕事でミスをしたとき、
- 「私はいつも失敗ばかり」と語る人
- 「今回は準備が足りなかっただけ」と語る人
では、次の行動がまったく変わります。
ナラティブアプローチは、この“語りの違い”に注目して対話を進める点が特徴です。
従来の助言型アプローチとの違い
一般的なアドバイス型のコミュニケーションは、
「こうしたほうがいい」
「次はこうしよう」
という“解決策の提示”が中心になります。
一方、ナラティブアプローチでは、
相手が自分で気づいたことを大切にする
という姿勢が基本です。
こちらが答えを与えるのではなく、語りの中から「新しい視点」や「可能性」を一緒に見つけていきます。
そのため、相手の主体性が育ちやすく、自発的な行動につながりやすいとされています。
どんな場面で活用されているのか
ナラティブアプローチは、専門領域だけでなく、日常やビジネスのシーンでも広く使われています。
- 職場の1on1ミーティング
- 部下育成・キャリア支援
- 教育現場での生徒支援
- 医療・介護分野での心理的支援
- コーチングやカウンセリング
「相手の話を丁寧に聞き、思い込みや不安をほどく」というプロセスは、多くの対人支援場面で役立つため、実務でも高い注目を集めています。
ナラティブアプローチが必要とされる理由
ナラティブアプローチが多くの場面で注目されているのは、人の「語り」が思考や行動に大きな影響を与えるからです。
同じ状況でも、人によって受け取り方がまったく違うことがありますよね。
その違いを理解し、丁寧に向き合うことで、相手が抱える問題の見え方や行動が自然と変わっていきます。
ここでは、ナラティブアプローチが必要とされる背景を、できるだけわかりやすく整理します。
自分の語りが思考と行動に影響する仕組み
私たちは、日々の体験を「自分なりの物語」として理解しながら生活しています。
たとえば、
- 「私は人に頼るのが苦手」
- 「新しいことを始めると失敗しがち」
- 「周りから認められていない気がする」
こうした“語り”は、実際の行動にも影響します。
もし自分を否定する語りが強いと、挑戦を避けたり、必要以上に落ち込んでしまったりすることがあります。
ナラティブアプローチは、この語りの背景を一緒に見直し、より自分らしく行動できるようにサポートする方法です。
問題解決が進みにくい「ドミナントストーリー」の存在
ナラティブアプローチでよく登場する言葉に 「ドミナントストーリー」 があります。
これは、本人の中で強く支配している語りのことで、時に思い込みや不安を含んでいる場合があります。
たとえば、
- 「私はプレゼンが苦手」
- 「どうせ評価されない」
このような語りが強すぎると、実際よりも自分を低く評価してしまい、行動が制限されることがあります。
ドミナントストーリーをそのままにしておくと、問題の本質が見えなくなり課題がこじれやすくなります。
ナラティブアプローチは、この語りにやさしく気づいてもらい、新しい見方を取り戻す手助けをします。
認知を整理することで行動が変わるプロセス
人は、新しい視点に気づけたとき、自然と行動が変わっていくことがあります。
たとえば、
- 「失敗したのは努力不足ではなく、準備の方向が違っていただけかもしれない」
- 「実は過去にうまくいった場面もあった」
このような“別の語り”に気づくことで、落ち込んでいた気持ちが少し軽くなったり、一歩踏み出す気持ちが生まれたりします。
ナラティブアプローチでは、相手の中にすでにある価値観や強みに目を向け、無理のないペースで新しい行動につなげていきます。
そのため、上司部下の面談やキャリア支援、教育・医療の現場などで広く利用されています。
ナラティブアプローチの基本ステップ(実例付き)

ナラティブアプローチは、相手の語りをもとに対話を進めていく方法です。
難しい手法のように感じるかもしれませんが、流れを押さえれば、日常のコミュニケーションでも活用できるやさしいアプローチです。
ここでは、一般的に使われる5つのステップを、実例と合わせて紹介します。
ステップ1:ドミナントストーリーに耳を傾ける
まずは、相手がどんな語りをしているのかを丁寧に聞くところから始まります。
急いで解決策を出すのではなく、その人が今どのように状況をとらえているのかを理解する時間を大切にします。
実例:
「私はプレゼンが本当に苦手で、いつも失敗してしまうんです」
という相談があったとします。
ここでのポイントは、“苦手”と言っている背景に何があるのか、ゆっくり耳を傾けることです。
ステップ2:問題を外在化して捉える
ナラティブアプローチの特徴のひとつが、この「外在化」です。
問題を“人そのもの”と結びつけず、切り離して考えていきます。
例:
「あなたがダメなのではなく、『緊張しやすさ』という問題が前に出てきているだけかもしれませんね」
このように、
「人 = 問題」ではなく
「人 ≠ 問題」
と捉えることで、気持ちが少し軽くなり、話しやすくなります。
ステップ3:新しい視点を引き出す質問を投げかける
外在化ができると、相手の視野が少し広がります。
ここでは、新しい気づきにつながる問いかけを行います。
問いかけの例:
- 「これまでのプレゼンで、少しでもうまくいった場面はありましたか?」
- 「その時は、どんな工夫をしていましたか?」
- 「もし同じ状況がまた来たとして、今ならどう感じそうですか?」
質問によって、本人も気づいていなかった強みや、別の可能性が見えてくることがあります。
ステップ4:例外的な成功やポジティブな出来事を探す
どんな人にも、「良かった経験」や「できた瞬間」があります。
それが小さな出来事でも、ナラティブアプローチでは大切に扱います。
実例:
「そういえば、一度だけ練習を重ねたプレゼンでうまく話せたことがありました」
このような思い出が語られると、本人の語りに変化が生まれます。
「本当にダメなわけではないのかもしれない」という感覚が芽生えるからです。
ステップ5:オルタナティブストーリー(新たな語り)を構築する
最後は、これまでの対話を踏まえながら、より前向きで、その人らしい新しい語りを一緒に作っていきます。
例:
「私はプレゼンが苦手」
という語りが、
「練習すれば落ち着いて話せる。次はもう少し工夫してみたい」
という語りに変わるイメージです。
この“語りの変化”こそが、行動変容につながる重要なポイントです。
ナラティブアプローチは、決して相手を変えようとする方法ではありません。
その人の中にある価値観や強みにそっと気づいてもらい、自然な形で次の一歩を踏み出してもらうための対話のプロセスです。
ナラティブアプローチの具体例(事例)
ここでは、実際の現場でどのようにナラティブアプローチが使われているのか、具体例を4つ紹介します。
どれも難しい専門知識がなくてもイメージできる内容なので、「自分の職場でも使えそう」と感じやすい部分です。
具体例①:職場でのコミュニケーション改善
ケース:上司からの評価を気にしすぎてしまう社員
Aさんは、「上司は自分を評価していない」「自分は仕事ができない」と語っていました。
この語りは強いドミナントストーリーになっており、仕事への自信を失う原因にもなっていました。
ナラティブアプローチの流れ
- 語りを丁寧に聞く
- 「評価されない自分」ではなく、「評価を気にしすぎる傾向」を外在化
- 「評価された経験はありますか?」と質問
- 過去に褒められた場面が思い出される
- 「自分は評価されていない」という語りが、
「評価を意識しすぎていただけかもしれない」へ変化
この変化により、Aさんは上司とのコミュニケーションを少しずつ前向きに取れるようになりました。
具体例②:キャリア相談での自己理解のサポート
ケース:「私には強みがない」と語る若手社員
Bさんはキャリア面談で、自分の強みがわからないと話していました。
アプローチ
- 外在化によって、「強みがない自分」ではなく、「強みを見つけられていない状態」と捉える
- 例外を探す質問
「周りに喜ばれたことはありますか?」
「自然とできてしまうことはありますか?」
すると、Bさんは「資料作成を頼まれることが多い」という話を思い出しました。
そこから、
→「強みがない」
という語りが
→「自分の強みに気づいていなかっただけかもしれない」
へと変わり、自信をもつきっかけにつながりました。
具体例③:教育現場での生徒支援
ケース:学習意欲が下がってしまった学生
Cさんは、「どうせ自分は勉強ができない」と話し、学習に向き合うことが難しくなっていました。
アプローチの流れ
- “勉強ができない自分” という語りをそのまま否定せずに聞く
- 「できない」のではなく、「どこから手をつけたら良いかわからない状態」と外在化
- 小さな成功体験を思い出してもらう
→「漢字テストでは良い点を取ったことがある」 - 新しい語りへ
→「科目によってはできる部分もある」
この変化により、Cさんは少しずつ課題に向き合いやすくなりました。
具体例④:医療・介護での心理的ケア
ケース:高齢者の自己否定的な語り
Dさんは、「自分は周りの迷惑になってばかり」と語り、気持ちが沈みがちでした。
ナラティブアプローチでは、Dさんの語りを温かく受け止めながら、
- 「迷惑をかけた」と感じた場面
- 「周りに喜ばれた」出来事
- 自分が大切にしている価値観
を一緒に話していきました。
その結果、
「迷惑ばかりではなく、他の人の役に立った経験もあった」
という語りが生まれ、気持ちが柔らかくなっていきました。
このように、ナラティブアプローチは対話を通して「語り」を大切に扱い、思い込みや不安が少しずつほぐれていくプロセスを支えます。
特別な場だけでなく、日常のコミュニケーションでも活かせる手法です。
ナラティブアプローチのメリット
ナラティブアプローチには、対話を通じて相手の気づきを促し、自然な変化を生みやすいという特長があります。
ここでは、実際の現場でよく感じられるメリットをわかりやすく整理して紹介します。
相手の主体性を引き出せる
ナラティブアプローチは、相手自身が気づき、選択し、行動していくプロセスを大切にします。
こちらが答えを与えるのではなく、「自分の力で考えられた」という実感が生まれるため、行動が継続しやすくなります。
例:
「こうしなさい」という指示ではなく、
「あなたはどう感じましたか?」
と問いかけることで、相手は自分の言葉で考え始めます。
信頼関係が深まり、対話が進みやすくなる
相手の語りを大切に扱うことで、「この人はきちんと話を聞いてくれている」と感じてもらいやすくなります。
その結果、安心して話せる関係が育ち、対話が深まりやすくなります。
特に1on1面談やキャリア支援では、この「安心感」がとても大きな効果を生みます。
問題を客観視しやすくなる
外在化のアプローチにより、
「自分が問題なのではなく、問題が自分から切り離せる」
という感覚が生まれます。
これにより、今まで強く感じていた不安や苦手意識が少し軽くなり、冷静に状況を見ることができるようになります。
例:
「私は緊張しやすい」
から
「緊張という問題があるだけで、私自身の価値とは別」
と捉えられるようになる。
新しい選択肢や行動が生まれやすい
ナラティブアプローチでは、語りの中から「例外」や「うまくいった経験」を探します。
そのため、自分の中にある可能性に気づきやすくなります。
例:
「できない」と思い込んでいたことも、
過去の成功体験を振り返る中で、
「工夫すればできるかもしれない」
という新しい語りに変わっていきます。
この“語りの変化”が、自然な行動の変化につながります。
相談者にも支援者にも無理がない
アドバイスを押しつける必要がなく、対話の中で一緒に気づきを探していくため、支援者にも負担が少ないというメリットがあります。
また、相談者も「否定される」感覚がなく、安心して話せます。
ナラティブアプローチは、特別なテクニックよりも、丁寧な対話と相手への尊重が中心になるアプローチです。
そのため、ビジネス・教育・医療など、多くの場面で無理なく取り入れられています。
ナラティブアプローチのデメリット・注意点
ナラティブアプローチは、多くの場面で役立つ柔らかい対話方法ですが、万能ではありません。
特性を理解したうえで使うことで、より良いコミュニケーションにつながります。
ここでは、実務でよく指摘されるデメリットや注意点を、わかりやすく整理してお伝えします。
対等な関係性を保つ難しさ
ナラティブアプローチでは、支援者と相談者ができるだけ 対等な関係 で対話を進めることが理想です。
しかし、上司と部下、教師と生徒など、立場が明確に分かれている場面では、この対等性を維持することが難しい場合があります。
そのため、支援する側は
「評価する立場ではなく、話を聴く姿勢」
を意識することが大切です。
問題が深刻な場合は専門的な介入が必要
ナラティブアプローチは、対話を中心としたやさしい方法ですが、
深刻なメンタルヘルスの問題や、医療的な支援が必要な状態には限界があります。
そのため、
- うつ状態や強い不安症状
- トラウマや深刻な心理的危機
- 医療機関での治療が必要なケース
などの場合は、専門家による支援と併用することが望ましいです。
解決までに時間がかかることがある
語りの背景を丁寧に理解しながら進めるアプローチのため、
短期的な即効性を求める場面には向かない場合があります。
「すぐに行動を変えたい」「短期間で結果を出したい」といったニーズが強い状況では、
アドバイス型のアプローチと組み合わせるとスムーズです。
支援者の質問力に影響される
ナラティブアプローチは、
「相手の語りを広げたり、深く理解したりする質問」
がとても重要になります。
そのため、質問の質によって対話の深さが変わることがあります。
ただし、難しく考える必要はありません。
以下の姿勢があれば十分効果が期待できます。
- 相手を尊重する
- 否定せずに聞く
- 気づきを促す質問をやさしく投げる
語りがまとまらないタイプの人にはサポートが必要
語ることが苦手な人や、考えが整理されにくい人の場合、
話が散らばってしまいやすいため、支援者がゆっくりと道筋をつけてあげる必要があります。
「急かさず、ゆっくり進める姿勢」が重要です。
ナラティブアプローチは、メリット・デメリットを正しく理解することで、
より相手に寄り添った対話ができるアプローチになります。
ナラティブアプローチのビジネスでの活用方法
ナラティブアプローチは、心理支援の場だけでなく、ビジネスの現場でも大きな効果を発揮します。
特に、コミュニケーションが複雑になりやすい職場では、語りを通して相手の考え方を理解することが、信頼関係づくりや課題解決の土台になります。
ここでは、ビジネスのシーンでよく使われる活用法を紹介します。
1on1や部下育成での対話支援
1on1ミーティングでナラティブアプローチを取り入れると、
部下の考え方・つまずき・強みが見えやすくなります。
活用例:
- 「最近どう?」ではなく、
「どんな場面でやりがいを感じた?」
「困っていることを整理するとしたら、どんな見え方になる?」
といった質問を使う。
語りを引き出すことで、表面的な業務相談ではなく、心理的な背景まで理解できるようになります。
チームの課題整理や振り返りに活かす
チーム全体での「語り」を扱うことで、課題や成功の背景が共有しやすくなります。
例:
- プロジェクトの振り返りで、
「何が問題だったか?」ではなく、
「どんな場面でうまくいった?」
「どんな工夫が役立った?」
と話してもらう。
これにより、責任追及ではなく学びに目を向けた対話が進み、心理的安全性の向上にもつながります。
キャリア面談での自律支援
社員がキャリアについて語るとき、
「自分には強みがない」
「何を目指せばよいかわからない」
といった語りが出ることがあります。
ナラティブアプローチを使い、以下のような質問を重ねることで、本人の気づきを深められます。
- 「どんな仕事のとき、少しでも手ごたえを感じましたか?」
- 「その経験で、あなたが大切にしていたことは何ですか?」
相手が自分の価値観や強みに気づくことで、主体的なキャリア形成につながります。
組織開発や心理的安全性の向上に役立つ
組織では「暗黙の語り」が存在することがあります。
例:
- 「失敗してはいけない」
- 「意見は言わないほうが安全」
こうした語りが強すぎると、チームの成長が妨げられてしまいます。
ナラティブアプローチを活用すると、
- メンバーがどんなストーリーを抱えているのか
- 組織全体の語りがどこに向いているのか
が見えるようになり、組織開発の方向性を定めるヒントになります。
問題解決の視点が広がる
アドバイス型のコミュニケーションに比べ、
「本人の内側にある視点」を引き出しやすいため、
複数の解決案が見つかることがあります。
例:
- 仕事が進まない社員に対し、
「スケジュール管理を改善して」
ではなく、
「どんな時に進みやすいと感じますか?」
と問いかける。
このように“語りの力”を使うことで、本人が自然と行動を変えやすくなります。
ビジネスの現場では、正解がひとつではないことが多くあります。
ナラティブアプローチは、相手の語りを理解しながら、より納得感のある解決策を一緒に見つけていくための助けになるアプローチです。
ナラティブアプローチを使うときの質問テンプレート集
ナラティブアプローチでは、「質問」がとても大切な役割を持ちます。
とはいえ、特別な技術が必要というわけではありません。
相手の語りを尊重しながら、気づきを促す質問をゆっくりと投げかけていくことで、対話は自然と深まっていきます。
ここでは、実際の現場で使いやすい質問をテーマ別にまとめました。
1on1や面談、キャリア相談など、さまざまな場面で活用できます。
気づきを促す質問
相手の語りを広げたり、背景にある価値観を引き出したりする時に使います。
- 「その時、どんな気持ちだったんですか?」
- 「その出来事の中で、特に印象に残っている場面はどこですか?」
- 「その経験を振り返ると、何が一番大切だったと思いますか?」
相手のペースに合わせてゆっくり聞くことで、本音が出てきやすくなります。
外在化につながる質問
問題を“本人の性格”と結びつけないようにする質問です。
- 「その問題を“名前をつける”としたら、どんな言葉が近いですか?」
- 「その問題は、どんな時に強く現れると思いますか?」
- 「その問題が小さくなる瞬間はありますか?」
問題を外に出して考えることで、気持ちが少し楽になります。
例外を探す質問
「うまくいかなかった語り」に偏っている時に、別の視点を見つけるための質問です。
- 「今までに、少しでもうまくいった場面はありましたか?」
- 「その時は、何が助けになっていましたか?」
- 「小さくても前進できた瞬間を思い出せますか?」
例外を見つけることで、「本当に全部がダメだったわけではない」と気づくきっかけになります。
新しい語り(オルタナティブストーリー)を作る質問
答えを押しつけるのではなく、「自分で見つける未来」を描いてもらう質問です。
- 「もし次に同じ状況が来たら、どうしてみたいですか?」
- 「今日の話を通して、どんな見方ができるようになりましたか?」
- 「これから試してみたい小さな一歩はありますか?」
この質問によって、行動変容につながる「新しい語り」が生まれやすくなります。
質問テンプレートは、すべて覚える必要はありません。
大切なのは、相手の話を丁寧に聴きながら、
「この問いがあれば気づきが深まりそうだな」
というタイミングでゆっくり投げかけることです。
ナラティブアプローチは、決して急がず、相手のペースに寄り添う対話のスタイルです。
よくある質問(FAQ)
ナラティブアプローチを学び始めると、「これはコーチングとどう違うの?」「初心者でも使えるの?」といった疑問が出てきます。
ここでは、特に多い質問をまとめて、やさしく回答していきます。
コーチングとは何が違うのですか?
コーチングは、目標達成や行動の促進に焦点を当てて対話を進める手法です。
一方、ナラティブアプローチは、
相手の語りの背景や意味に注目し、考え方や感じ方に変化を生み出すこと
を大切にします。
どちらが良い・悪いではなく、目的が少し異なります。
- 行動を前に進めたい → コーチング向き
- 語りの整理や気づきが必要 → ナラティブアプローチ向き
というイメージです。
カウンセリングとどう違うのですか?
カウンセリングは、心の回復や心理的な問題の改善を目的に行われる専門的な支援です。
ナラティブアプローチは、心理支援にも使われますが、
日常のコミュニケーションやビジネスの1on1でも気軽に使える方法です。
共通点は「相手の話を大切にする」という姿勢ですが、
ナラティブアプローチはより日常的で、誰でも取り入れやすい点が特徴です。
初心者でも実践できますか?
はい、できます。
特別な資格や知識がなくても、質問の投げ方や相手の語りの聞き方を意識するだけで実践できます。
最初は次のポイントを意識すれば十分です。
- 相手の語りをゆっくり聞く
- 否定しない
- 外在化するように捉える
- 小さな成功や例外を見つける
これだけでも、対話の質は大きく変わります。
相手が話してくれない場合はどうすればいいですか?
無理に話を引き出そうとせず、安心して話せる雰囲気をつくることが大切です。
- 否定しない聞き方
- ペースを合わせる
- 相手の言葉をそのまま返す(リフレクション)
といった基本的な姿勢を続けていくと、少しずつ話してくれることが増えていきます。
また、質問が多すぎると話しづらくなる場合もあります。
まずは「聴く姿勢」を中心に進めるとスムーズです。
どんな場面で使うと効果的ですか?
以下のような場面で特に活かしやすいです。
- 1on1や部下の育成
- キャリア相談
- 生徒指導や教育支援
- 医療・介護の心理ケア
- 自己理解を深めたい時
「相手の言葉に寄り添いたい」という場面なら、ほとんどのケースで役立ちます。
まとめ
ナラティブアプローチは、「相手の語り」を大切にしながら、その人の価値観や背景に寄り添い、自然な気づきと行動の変化を促す対話の方法です。
特別な技術よりも、相手を尊重し、否定せずに耳を傾ける姿勢が中心になります。
この記事では、
- ナラティブアプローチの基本
- 実践ステップ
- 具体例
- メリット・デメリット
- ビジネスでの活用方法
- 質問テンプレート
など、実務でも使いやすい形で整理してきました。
語りを通じて相手の見え方が変わると、
その人の行動や選択にも小さな変化が生まれます。
その積み重ねが、より良い人間関係や働きやすい環境づくりにつながります。
まずは、「ゆっくり聴く」「否定しない」など、取り入れやすい部分から始めてみてください。
日々の対話が少しずつ変化し、相手との関係が柔らかくなることを実感できるはずです。
ナラティブアプローチは、誰でも今日から使える“やさしい対話の知恵”です。
あなたのコミュニケーションが、さらに温かく深いものになりますように。