はじめに
「ハラスメント防止法とは、具体的にどのような法律なの?」
「会社はどこまで対策をしなければいけないの?」と疑問に感じていませんか。
人事や総務の担当者として、社内のハラスメント相談窓口を設置することになったり、就業規則を見直すよう指示されたりしても、何から確認すればよいのか迷うことがありますよね。
この記事では、厚生労働省が示すハラスメント防止に関する法律の種類や、企業に義務付けられている相談体制の整備、社内への周知、相談後の対応について解説します。
ハラスメント防止法とは?

ハラスメント防止法とは、職場でのハラスメントを防ぐために企業が守るべき法律や義務をまとめて指す際に使われる言葉です。
ここでは、法律の位置づけと種類ごとの違い、企業に求められる防止措置について説明します。
ハラスメント防止法という名称の単独の法律があるわけではない
「ハラスメント防止法」は、職場のハラスメント防止に関係する複数の法律をまとめた呼び方で、正式な法律名ではありません。
例えば、パワーハラスメントの防止については、労働施策総合推進法で定められています。
そのため、企業が法律上の義務を確認する際は、該当する法律の正式名称を把握しておくことが大切です。
ハラスメントの種類ごとに根拠となる法律が異なる
職場のハラスメントは、種類によって防止措置の根拠となる法律が異なります。
パワーハラスメントは労働施策総合推進法、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントは男女雇用機会均等法で定められています。
また、育児休業や介護休業等に関するハラスメントは育児・介護休業法が根拠となるため、それぞれの法律に沿った対応が必要です。
企業には法律に基づくハラスメント防止措置が義務付けられている
企業には、職場のハラスメントを防ぐため、法律に基づいた対策を行う義務があります。
具体的には、ハラスメントを許さない方針の周知や相談窓口の設置、相談があった際の事実確認や再発防止などが求められます。
こうした措置は企業規模にかかわらず必要であり、相談した従業員が不利益な扱いを受けないよう配慮することも大切です。
ハラスメントの種類と根拠となる法律
職場のハラスメントは、行為の内容や被害を受ける人の状況によって、適用される法律が異なります。
ここでは、6つのハラスメント対策について、根拠となる法律と企業に求められる対応を説明します。
パワーハラスメントは労働施策総合推進法
職場のパワーハラスメントは、労働施策総合推進法第30条の2に基づき、防止措置が義務付けられています。
パワハラとは、優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境を害する行為です。
企業には、パワハラを許さない方針の周知や相談窓口の設置、再発防止などが求められ、2022年4月からは中小企業を含むすべての企業が対象となっています。
セクシュアルハラスメントは男女雇用機会均等法
職場のセクシュアルハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条に基づき、防止措置が義務付けられています。
セクハラとは、職場での性的な言動によって、労働者が不利益を受けたり、働く環境が悪化したりする行為です。
企業には、セクハラを許さない方針の周知や相談窓口の設置、被害者への適切な対応などが求められ、性別や企業規模にかかわらず適用されます。
妊娠・出産等ハラスメントは男女雇用機会均等法
妊娠・出産等に関するハラスメントは、男女雇用機会均等法第11条の3に基づき、防止措置が義務付けられています。
妊娠や出産、産前産後休業などに関する上司や同僚の言動によって、女性労働者の就業環境が害される行為が対象です。
企業には、関連制度の周知や相談窓口の設置に加え、相談があった際の適切な対応や再発防止が求められます。
育児・介護休業等ハラスメントは育児・介護休業法
育児・介護休業等に関するハラスメントは、育児・介護休業法第25条に基づき、防止措置が義務付けられています。
育児休業や介護休業などの制度を利用する際に、上司や同僚の言動によって就業環境が害される行為が対象です。
企業には、制度の内容やハラスメントを許さない方針の周知、相談窓口の設置、相談後の適切な対応などが求められます。
カスタマーハラスメント対策は2026年10月から事業主の義務
カスタマーハラスメント対策は、改正労働施策総合推進法に基づき、2026年10月1日からすべての事業主に義務付けられています。
カスハラとは、顧客や取引先などによる社会通念上許容される範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境が害される行為です。
企業には、カスハラを許さない方針の周知や相談窓口の設置、被害を受けた従業員の保護や再発防止などが求められます。
求職者等へのセクシュアルハラスメント対策も2026年10月から事業主の義務
求職者等へのセクシュアルハラスメント対策は、改正男女雇用機会均等法に基づき、2026年10月1日から事業主の義務となっています。
採用面接やインターンシップなどの求職活動等において、企業の担当者などが求職者等に対して行う性的な言動が対象です。
企業には、セクハラを許さない方針の周知や相談体制の整備、被害が発生した際の適切な対応と再発防止が求められます。
厚生労働省が示す事業主のハラスメント防止措置
厚生労働省は、職場のハラスメントを防止するため、事業主が講じるべき措置を定めています。
ここでは、相談者のプライバシー保護や不利益な取り扱いの禁止も含め、企業が実施すべき5つの防止措置について説明します。
ハラスメントを許さない方針を明確にして周知する
企業は、ハラスメントを許さない方針を明確にし、すべての従業員に周知する必要があります。
就業規則や社内規程に禁止する行為や懲戒処分などを定め、研修やメールなどを通じて従業員に伝えます。
方針を定めるだけでなく、従業員が内容を理解し、いつでも確認できる環境を整えることが大切です。
相談窓口を設置して適切に対応できる体制を整える
企業は、従業員が安心してハラスメントについて相談できる窓口を設ける必要があります。
相談窓口は社内の担当者が担うほか、外部機関に委託することもでき、実際に被害が発生する前の相談にも対応します。
また、相談担当者が適切に対応できるよう、対応手順や関係部署との連携方法を決めておくことが大切です。
相談があった場合は事実関係を迅速かつ正確に確認する
企業は、ハラスメントの相談を受けた場合、できるだけ早く事実関係を確認する必要があります。
相談者から発生日時や相手の言動などを聞き取り、必要に応じて行為者とされる人や周囲の従業員にも話を聞きます。
一方の説明だけで判断せず、関係者の話や記録を照らし合わせながら、公平かつ慎重に確認することが大切です。
被害者と行為者に適切な措置を行い再発を防止する
企業は、ハラスメントの事実が確認された場合、被害者と行為者の双方に適切な対応を行う必要があります。
被害者には本人の意向を踏まえて配置転換や職場環境の改善を検討し、行為者には状況に応じて指導や懲戒処分などを行います。
また、同じ問題を繰り返さないよう、社内方針の再周知や研修などを通じて再発防止に取り組むことも大切です。
相談者のプライバシーを保護し不利益な取り扱いをしない
企業は、ハラスメントの相談者や関係者のプライバシーを守り、安心して相談できる環境を整える必要があります。
相談内容や個人情報は適切に管理し、相談や事実確認への協力を理由に、解雇や降格などの不利益な取り扱いをしてはいけません。
また、プライバシーの保護や不利益な取り扱いの禁止について社内規程などに定め、従業員に周知することが大切です。
ハラスメントを受けた場合の相談先
職場でハラスメントを受けた場合は、一人で抱え込まず、相談できる窓口を確認することが大切です。
ここでは、勤務先での相談方法、都道府県労働局の相談窓口、厚生労働省の「あかるい職場応援団」で相談先を確認する方法について説明します。
まずは勤務先の相談窓口や人事担当者に相談する
職場でハラスメントを受けた場合は、まず勤務先の相談窓口や人事担当者に相談する方法があります。
相談する際は、被害を受けた日時や場所、相手の言動などを整理し、メールやチャットの履歴などがあれば一緒に伝えましょう。
また、相談後は会社がどのように事実確認を進めるのか、今後の対応について確認しておくと安心です。
会社で解決できない場合は都道府県労働局に相談する
勤務先に相談しても改善されない場合や、社内で相談しにくい場合は、都道府県労働局に相談できます。
雇用環境・均等部(室)では、パワハラやセクハラなどの相談を受け付けており、状況に応じて利用できる制度や対応方法を案内してもらえます。
また、相談する前に被害の経緯や会社の対応を整理しておくと、状況をスムーズに伝えられます。
厚生労働省の「あかるい職場応援団」で相談先を確認する
厚生労働省の「あかるい職場応援団」は、職場のハラスメントに関する情報や相談窓口を紹介している公式サイトです。
都道府県労働局などの相談先を確認できるため、どこに相談すればよいか迷ったときにも役立ちます。
相談先が分からない場合は、あかるい職場応援団の公式サイトを参考に、自分の状況に合った窓口を探してみましょう。
まとめ
ハラスメント防止法とは、職場のハラスメント防止に関する複数の法律をまとめた呼び方です。
企業には、相談窓口の設置や防止方針の周知、被害者への適切な対応などが義務付けられています。
2026年10月からは、カスタマーハラスメントや求職者等へのセクハラ対策も義務化されました。
企業は厚生労働省の指針を確認し、社内規程や相談体制を整備することが重要です。