はじめに
「ペースメーカーのペーシング波形とは、どのような波形のことを指すの?」
「心電図に表示されるスパイクは何を意味しているの?」
このように、ペースメーカーのペーシング波形について調べていると、心電図上に現れる細いスパイクの意味や、正常波形と異常波形の違いが分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ペースメーカーの基本的なペーシング波形の見方から、スパイクの意味、正常波形の特徴、代表的な異常波形までを順を追ってわかりやすく解説していきます。
ペースメーカーのペーシング波形とは
ペースメーカーのペーシング波形を理解するためには、まず心電図上でどこを確認すればよいのかを知ることが大切です。
ここでは、ペーシング波形の基本的な見方や正常波形の特徴、波形を確認する目的についてわかりやすく解説します。
ペーシング波形はスパイクと心電図の反応を見る
ペーシング波形とは、ペースメーカーが電気刺激を出したことを示すスパイクと、その刺激に対して心臓がきちんと反応しているかを確認するための波形です。
心電図では、スパイクは細く鋭い縦線として表示され、その直後に心房ならP波、心室ならQRS波が現れます。
もしスパイクのあとに対応する波形が見られない場合は、刺激がうまく伝わっていない可能性があります。
そのため、ペーシング波形を見るときは、まずスパイクがあるかを確認し、そのあとに心電図が反応しているかを順番に見ていくことが大切です。
正常波形は刺激のあとに反応が出る
正常なペーシング波形では、ペースメーカーの電気刺激を示すスパイクが現れたあとに、心臓が反応した心電図波形が続きます。
心房ペーシングではスパイクのあとにP波、心室ペーシングではスパイクのあとに幅の広いQRS波が見られます。
スパイクのあとにこれらの波形が安定して続いていれば、ペースメーカーの刺激が心筋へ正常に伝わっている状態と考えられます。
そのため、波形を確認するときは、スパイクのあとに対応するP波やQRS波が続いているかを見ていくと分かりやすいです。
波形を見る目的はペースメーカーの作動確認
ペーシング波形を見る目的は、ペースメーカーが設定どおりに電気刺激を出し、心臓がその刺激にきちんと反応しているかを確認することです。
心電図でスパイクが適切なタイミングで現れ、そのあとにP波やQRS波が続いていれば、正常に作動していると考えられます。
一方で、スパイクが出ない、スパイクのあとに反応が見られない、不必要なタイミングでスパイクが出る場合は、詳しく状態を確認する必要があります。
そのため、ペーシング波形はペースメーカーの動作状況を把握するうえで大切な確認項目といえます。
ペースメーカー波形の基本的な見方
ペースメーカー波形を読むときは、複雑な判読方法を覚える前に、確認する順番を理解することが重要です。
また、ペースメーカー波形を理解するうえで欠かせない「キャプチャ」と「センシング」の基本的な考え方も押さえておくと、波形の見方がより分かりやすくなります。
スパイクの位置を確認する
スパイクは、ペースメーカーが電気刺激を出したことを示す細く鋭い縦線です。
波形を確認するときは、まずスパイクがどこに表示されているかを見てみましょう。心房を刺激する場合はP波の直前、心室を刺激する場合はQRS波の直前に現れます。
スパイクが適切な位置にあれば、ペースメーカーが設定どおりのタイミングで刺激を出していると考えられます。
そのため、ペースメーカー波形を読むときは、最初にスパイクの位置を確認することが大切です。
P波とQRS波のどちらに反応しているか見る
ペースメーカー波形を確認するときは、スパイクのあとに現れる波形がP波なのかQRS波なのかを見ていきます。
スパイクの直後にP波があれば心房ペーシング、QRS波があれば心室ペーシングが行われています。刺激する部位によって現れる波形が異なるため、どちらの波形が続いているかを確認することで、設定どおりに刺激が伝わっているかを判断しやすくなります。
そのため、スパイクの有無だけでなく、そのあとにどの波形が現れているかまで確認することが大切です。
キャプチャとセンシングを簡単に理解する
キャプチャとは、ペースメーカーのスパイクが出たあとにP波やQRS波が現れ、心臓が実際に反応している状態のことです。
一方、センシングとは、ペースメーカーが患者さん自身の心拍を正しく検知している状態を指します。
キャプチャができていればスパイクのあとに対応する波形が続き、センシングが正常であれば、自分の心拍がある場面で不要なスパイクは出ません。
ペースメーカー波形を見るときは、「刺激したあとに反応しているか」「自分の心拍をきちんと感知できているか」の2つを確認すると分かりやすいです。
代表的なペーシング波形の種類
ペースメーカーの波形は、設定されているペーシングモードによって見え方が異なります。
波形を正しく判断するためには、代表的なペーシングモードごとの特徴を理解し、それぞれがどの部位に電気刺激を送っているのかを把握することが大切です。
「VVIやDDD以外にも、ペースメーカーにはさまざまな設定があります。モードの違いやアルファベットの意味を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。」
▶ペースメーカーのモード一覧|VVI・DDD・AAIの違いをわかりやすく解説
VVIペーシング波形の特徴
VVIペーシングは、心室の動きを監視しながら、必要なときだけ心室へ電気刺激を送る方式です。
心電図では、スパイクが現れたあとに幅の広いQRS波が続くのが特徴です。また、自分の心拍が十分にある場合は刺激を行わないため、不要なスパイクは出現しません。
そのため、VVIペーシング波形を見るときは、スパイクのあとにQRS波が続いているか、そして自発的な心拍がある場面で余分なスパイクが出ていないかを確認すると分かりやすいです。
DDDペーシング波形の特徴
DDDペーシングは、心房と心室の両方を監視し、必要に応じて電気刺激を行う方式です。
心電図では、心房を刺激するとスパイクのあとにP波が現れ、続いて心室への刺激が必要な場合は、もう一度スパイクが出てQRS波が続きます。
また、自分のP波やQRS波を検知できるため、必要のない刺激は行われません。
そのため、DDDペーシング波形を見るときは、心房と心室のスパイクの位置、そしてそれぞれのあとにP波やQRS波がきちんと続いているかを確認すると分かりやすいです。
波形の違いは刺激する場所で変わる
ペーシング波形は、ペースメーカーがどこを刺激するかによって見え方が変わります。
心房を刺激する場合はスパイクのあとにP波が現れ、心室を刺激する場合はQRS波が続きます。また、心房と心室の両方を刺激する設定では、それぞれに対応したスパイクと波形が順番に表示されます。
そのため、ペーシング波形を確認するときは、スパイクがどこに出ているか、そしてそのあとにP波やQRS波が続いているかを見ていくと分かりやすいです。
ペーシング波形でよくある異常の見方
ペースメーカー波形を確認するときは、正常な波形だけでなく異常のサインを見つけることも重要です。
ここでは、臨床現場で比較的よく見られる異常波形の特徴と、心電図上でどのような点を確認すればよいのかを解説します。
「キャプチャ不全やセンシング不全が起こる原因や、実際の心電図でどのように見分けるのかを詳しく確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。」
▶ ペースメーカーの異常波形とは?キャプチャ不全・センシング不全の見分け方を解説
スパイクがあるのにQRS波が出ない
スパイクが出ているのに、その直後にQRS波が現れない場合は、ペースメーカーの刺激が心筋にうまく伝わっていない可能性があります。
正常な心室ペーシングでは、スパイクのあとにQRS波が続きますが、この反応が見られない状態は「キャプチャ不全」と呼ばれます。
心電図ではスパイクだけが表示され、そのあとにQRS波が出ないことで確認できます。
そのため、波形を見るときはスパイクがあるかだけでなく、そのあとにQRS波がきちんと続いているかまで確認することが大切です。
必要ないタイミングでスパイクが出る
必要のないタイミングでスパイクが出ている場合は、ペースメーカーが自分の心拍をうまく検知できていない可能性があります。
通常はP波やQRS波を検知すると刺激を控えますが、センシングが正常に働いていないと、自発的な心拍がある場面でもスパイクが現れることがあります。
心電図では、P波やQRS波のすぐあとなど、本来は刺激が不要な場所にスパイクが見られます。
そのため、波形を確認するときは、スパイクの有無だけでなく、自発心拍との位置関係もあわせて確認することが大切です。
スパイクが出るべき場面で出ない
スパイクが出るべき場面で現れない場合は、ペースメーカーが必要な刺激を送れていない可能性があります。
通常は、心拍数が設定された下限を下回るとスパイクが出現しますが、それが見られないと心拍の補助が行われません。
心電図では、脈がゆっくりになっていたり、心拍が一時的に止まっていたりするのに、スパイクが確認できない状態として現れます。
そのため、波形を見るときは心拍数や心拍の間隔を確認し、刺激が必要な場面でスパイクが出ているかを見ていくことが大切です。
ペースメーカー波形を見るときのポイント
ペースメーカー波形を正しく評価するためには、確認するポイントを順番に見ていくことが大切です。
また、正常なペーシング波形を基準として比較することで、小さな変化や異常にも気づきやすくなります。
「ペースメーカーの基本的な仕組みや種類から理解したい場合は、まずはこちらの記事を読むと全体像を把握しやすくなります。」
▶ ペースメーカーとは?仕組みや種類、心電図の見方をわかりやすく解説
まずスパイクの有無を確認する
ペースメーカー波形を確認するときは、まずスパイクが出ているかを見ていきます。
スパイクは、ペースメーカーが電気刺激を出したことを示す細い縦線で、正常に作動していれば必要な場面で現れます。
スパイクが確認できないと、そのあとのP波やQRS波との関係を判断しにくいため、波形を読むときの最初の確認ポイントになります。
まずはスパイクの有無と、どの位置に出ているかを確認することが大切です。
刺激のあとに反応しているかを見る
スパイクを確認したあとは、その直後にP波やQRS波が現れているかを見ていきます。
正常であれば、ペースメーカーの刺激に合わせて心臓が反応し、対応する心電図波形が続きます。
反対に、スパイクが出ているのにP波やQRS波が見られない場合は、刺激が心筋にうまく伝わっていない可能性があります。
そのため、ペースメーカー波形を見るときは、スパイクがあるかだけでなく、刺激のあとに心電図がきちんと反応しているかまで確認することが大切です。
正常波形を基準に比較する
ペースメーカー波形を確認するときは、まず正常な波形を基準にして見ていくことが大切です。
正常であれば、スパイクが適切なタイミングで現れ、その直後にP波やQRS波が続きます。もし波形の位置や順序がいつもと違っていれば、キャプチャ不全やセンシング不全などの異常に気付きやすくなります。
そのため、異常波形を個別に覚えるよりも、まず正常波形の特徴を理解し、比較しながら確認していくと分かりやすいです。
まとめ
ペースメーカーのペーシング波形を見るときは、難しく考えすぎず、「スパイクが出ているか」「そのあとに心臓が反応しているか」を順番に確認することが大切です。
正常な波形では、スパイクのあとにP波やQRS波が続き、ペースメーカーの刺激が心臓へきちんと伝わっていることが分かります。
また、VVIやDDDなどモードによって波形の見え方が変わるため、どこを刺激しているのかを意識すると理解しやすくなります。
もし、スパイクがあるのに反応が見られない、必要のない場面でスパイクが出る、反対に必要な場面でスパイクが出ない場合は、キャプチャやセンシングに問題がないかを確認することが重要です。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、まずは正常波形を基準にして、「スパイク」と「そのあとの反応」を一つずつ確認していけば、ペースメーカー波形の特徴を少しずつ理解しやすくなるでしょう。