プロジェクトを外部に依頼するとき、見積書に必ず登場するのが 「プロジェクト管理費(PM費)」 です。
しかし、実務でも「なぜ必要なのか?」「適正な割合は?」と疑問を持つ人は少なくありません。
この記事では、PMPの考え方(プロセス群・知識エリア)を踏まえながら、
プロジェクト管理費の仕組み・相場・適正割合 を初心者向けに整理します。
目次
プロジェクト管理費とは何か
プロジェクト管理費とは、
プロジェクトを計画通りに進めるための“管理業務にかかるコスト” のことです。
具体的には以下のような活動が含まれます:
計画(WBS・スケジュール・リスク計画)
関係者調整(ステークホルダーマネジメント)
進捗・コスト・品質の監視(監視・コントロール)
会議体の管理・課題対応
外注管理・調達コントロール
つまり
PMがこなすすべての「段取り・調整・管理作業」 の工数です。
PMBOK基準で見るプロジェクト管理費
本編で解説したとおり、PM業務はプロセス群全体にまたがります。
| プロセス群 | PMが担う主な業務 |
|---|---|
| 立ち上げ | 目的定義、成功基準、ステークホルダー特定 |
| 計画 | WBS・スケジュール・コスト・リスクの策定 |
| 実行 | チーム管理、調達、コミュニケーション |
| 監視・コントロール | 進捗・品質・コストの差分評価、変更管理 |
| 終結 | 引き渡し、教訓まとめ、契約終了 |
管理費は、これら 全フェーズに総合的に発生するコスト と考えると分かりやすいです。
プロジェクト管理費の一般的な割合
多くの業界で採用される目安は以下の通りです。
Web制作・開発
全体費用の 10〜20%
- 小規模サイト:10%
- 中〜大規模開発:15〜20%
システム開発(SIer・IT系)
15〜25%
要件定義や調達管理が多くなるほど上がる傾向があります。
コンサル・業務改善PJ
20〜30%
調整・分析工数が大きいため割合が高くなります。
適正なPM費は“プロジェクトの複雑性”で決まる
PMBOK(プロジェクトマネジメントの標準)では、
コストの妥当性は「プロジェクトの複雑性」で判断するべき とされています。
複雑性が高いほど、管理コストも自然と高くなります。
複雑性が上がるポイント
関係者が多い
外注/調達が多い
技術的な不確実性が高い
スケジュールがタイト
他チームとの連携が多い
複雑性が高いプロジェクトは、PMの調整・監視工数も増えるため、
管理費15〜25%は妥当 です。
「PM費が高い」と感じるときのチェックポイント
以下のチェックに当てはまる場合、コストに理由があります。
✔ WBSを作ってくれているか
→ 作っていれば管理工数は確実に発生しています。
✔ リスク計画・変更管理をやっているか
→ トラブル防止のための必須作業です。
✔ 週1〜2回以上のミーティングがあるか
→ 工数が膨らむ要因です。
✔ 調達や外注管理が多いか
→ 管理工数が大きくなるポイント。
✔ ステークホルダーが多いか
→ 調整業務はPMの95%を占めます。
これらが当てはまるほど、管理費は妥当と言えます。
管理費を削ると起こる典型的な失敗
これは本編「第6章:実務でよくある落とし穴」と完全リンクしています。
WBSが粗く手戻りが多発
変更管理が崩壊して納期遅延
コミュニケーション不足で品質低下
見積もり根拠が弱く赤字化
リスク対策が不十分で炎上
管理費を削るほど、プロジェクトは 事故率が上がる のが実務の現実です。
適正なプロジェクト管理費を見極める3つのポイント
① WBS・計画書の質
→ 計画に力を入れているかどうかで、PMレベルが分かる。
② 管理プロセスの明確さ
→ 進捗・品質・コスト・リスク管理の運用ができているか。
③ 変更管理フローの有無
→ 変更を無秩序に受けるPMはプロジェクトを壊します。
まとめ:PM費は“保険”ではなく“完成させるための必要経費”
プロジェクト管理費は、ただの“手数料”ではありません。
品質(Q)・コスト(C)・納期(D)を守るための実務コスト です。
PM業務は、
トラブルの予防
調整の負荷軽減
計画の精度向上
手戻りの削減
変更による崩壊の防止
といった形で、プロジェクトの成功率を左右します。
本編でも解説したように、
PMBOKでは“計画 → 実行 → 監視”の一連のプロセスこそがプロジェクト管理の心臓部です。
そのため、適切な管理費はプロジェクト成功に不可欠です。
- → PMBOKプロセス群を完全整理|5つのステップと10の知識エリアを図解で理解
(プロセス群の役割を理解するならこちら) - → 外注トラブルを防ぐ見積書の読み方
(見積もりの“どこを見るべきか”を知りたい人向け)