プロジェクトが遅れる最大の原因は
「タスクの漏れ」 と 「作業の粒度が揃っていないこと」
です。
これを防ぐために使うのが
WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)
WBSを正しく作れるようになると、
- タスクの抜け漏れがなくなる
- スケジュールが作りやすくなる
- 見積精度が上がる
- チーム間の認識ズレがなくなる
- 進捗管理が格段にやりやすくなる
と、プロジェクト管理が劇的に安定します。
この記事では、初心者でも再現できる「WBSの正しい作り方」 を実務レベルで徹底解説します。
この記事で分かること
- WBSとは何か(目的・効果)
- WBSで使う階層構造の考え方
- 作業分解の“正しい順番”
- 実務で使うWBSテンプレ
- 粒度を揃えるコツ
- プロジェクトの種類ごとのWBS例
- 作成時のよくある失敗と対策
目次
WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)とは?
WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構造)とはプロジェクトを「分解して見える化」する手法です。
プロジェクト全体を階層構造で分解して
タスクの全体像・構造・抜け漏れを可視化する技法
です。
ポイントはこの3点。
WBSを作るメリット
PMが必ず使う理由
- タスクの抜け漏れがなくなる
- 作業範囲(スコープ)が明確になる
- スケジュールが作りやすい
- 見積もり精度が上がる
- 担当割り振りが適切にできる
- 進捗管理がしやすくなる
特に WBSはスケジュール作成(CPM)やCCPMの前提となる作業 です。
WBSの作り方
実務で再現できる「7ステップ」
初心者でも迷わず作れるよう、順番に整理しています。
ステップ①
プロジェクトの目的・ゴールを明確にする
WBSは「何を作るか」が明確でないと機能しません。
目的
達成すべき成果
完了の定義(Doneの定義)
を先に揃えます。
ステップ②
成果物を列挙し、上位階層をつくる(Deliverables)
WBSの基本は 成果物ベースの分解。
例(Webサイト制作):
トップページ
下層ページ
デザインデータ
コーディングデータ
サーバー設定
テスト仕様
工程ベースに分解するのではなく、
まず「最終的に何を納品するか」から書き出すのが正解。
ステップ③
成果物を「構成要素」に分解する(階層化)
各成果物を、さらに2階層・3階層へ分解します。
例:トップページ
→ ワイヤーフレーム
→ デザイン
→ HTML/CSS
→ 動作チェック
「成果物 → その構成要素 → 作業」
という順番を守ると抜け漏れがなくなります。
ステップ④
各タスクを“作業レベル”まで細分化する
ここで初めて「作業」に落とし込みます。
ワイヤー作成
デザイン作成
画像書き出し
コーディング
レスポンシブ対応
テスト
粒度は「1〜2日で終わるレベル」が目安。
ステップ⑤
タスクの粒度を揃える(最重要)
粒度がバラバラだと、見積もり・進捗管理すべてが崩れます。
例:
Aタスク=5分で終わる
Bタスク=5日かかる
→ 管理不能。
理想の粒度:
1タスク 4〜16時間(1日〜2日)
どうしても大きい場合は再分解
ステップ⑥
依存関係を確認する
この後のスケジュール作成(CPM)で必須。
Aが終わらないとBが開始できない
並列で実施可能か
他チームとの受け渡しタイミング
ステップ⑦
レビューして、抜け漏れをチェック
抜け漏れが起きやすいポイント:
非機能(セキュリティ・パフォーマンス)
テスト項目
レビュー工程
ドキュメント作成
依頼者への確認作業
WBSは「作ったら終わり」ではなく、必ず レビューで精度を高める工程 が必要。
WBSの例:Web制作プロジェクト
1. デザイン
1-1. トップページ
- ワイヤーフレーム作成
- デザイン制作
- 修正対応
1-2. 下層ページ
- ワイヤーフレーム作成
- デザイン制作
1-3. 画像書き出し
2. コーディング
2-1. トップページHTML
2-2. 下層ページHTML
2-3. CSS設計
2-4. JS実装
2-5. 動作確認
3. サーバー関連
3-1. ドメイン設定
3-2. SSL設定
3-3. WordPress構築
4. テスト
4-1. 動作確認
4-2. レスポンシブテスト
4-3. セキュリティチェック
このように階層構造で見える化するのがWBSです。
WBS作成でよくある失敗と対策
失敗① 工程ベースで分解してしまう
対策:成果物ベースで分解する
失敗② 粒度がバラバラ
対策:1〜2日で終わるレベルに合わせる
失敗③ テスト・非機能が抜ける
対策:チェックリストを用意して網羅する
失敗④ 関係者と合意していない
対策:WBSは“合意文書”としてレビューする
CPMやCCPMとの関係
WBSが「すべての前提」
CPM:WBSでタスクが正しく分解されていないとCP特定が不正確
CCPM:タスクの粒度が揃っていないとバッファ設計が破綻
PMBOK:計画プロセスの中心ツール
つまり、WBSが強いとプロジェクト全体が強くなる。
▶ PMBOKプロセス群を完全整理|プロジェクト管理の基礎を体系的に理解する
(補足:WBSがPMBOKの計画プロセス内でどの位置にあるか理解できます)
まとめ
WBSは“プロジェクト成功の基盤”
WBSが作れると、
スケジュール・見積もり・進捗管理の精度が圧倒的に上がります。
成果物ベースで分解する
階層構造で整理
粒度を揃える
依存関係を整理
合意を取る
この手順さえ守れば、
どんなプロジェクトでも“抜け漏れゼロ”のWBSが作れます。