- クリティカルパス法(CPM)の基本
- ネットワーク図の書き方
- 前進計算・後退計算の求め方
- フロート(余裕時間)の計算方法
- ガントチャートとの違い
- 実務で「納期を守る」ための使い方
目次
クリティカルパス法とは?
クリティカルパス法(Critical Path Method:CPM)は、プロジェクトの中でどのタスクが納期を決定しているのかを特定する手法です。
すべてのタスクには開始日・終了日・依存関係があり、それらをつないだ時に「最も時間がかかる経路」がプロジェクト全体の最短工期になります。
その経路こそがクリティカルパスです。
クリティカルパス上のタスクは1分でも遅れると納期が遅延します。
逆に、クリティカルパス外のタスクには一定の余裕(フロート)があり、多少ズレても納期に直結しません。
クリティカルパスが重要な理由
最も重要な理由は、どのタスクを「絶対に遅らせてはいけないか」が明確になることです。
● 遅延の影響範囲がひと目で分かる
● リソース配分の優先順位が明確になる
● バッファの置き場所が合理化される
● プロジェクトの初期段階で「詰みポイント」を発見できる
忙しいPMほど「全タスクが重要」に見えがちですが、現実には “納期を決めているタスクは一部” しかありません。
この見極めを可能にするのがクリティカルパス法です。
プロジェクトマネジメントにおける位置づけ
クリティカルパス法は、工数見積りとスケジュール作成の橋渡しをする存在です。
工数見積り=作業量を見積もる
クリティカルパス法=納期に直結するタスクの特定
スケジュール=実際の開始・終了日を決める
特に工数見積りをボトムアップで行った後、「この工数はプロジェクト全体のどこに効くのか?」を判断する場面で必須となります。
クリティカルパスを特定する前提として、まずはタスクごとの工数が正確である必要があります。
どれだけネットワーク図を描いても、工数が粗いままでは正しいクリティカルパスは導けません。
そのため、クリティカルパス法を行う前に 精度の高い工数見積り を作ることが必須です。
▶ プロジェクト工数の見積もり方|PMが使う3つの実務手法と精度を上げるコツ
クリティカルパス分析の前提になる「工数の精度」を高める方法を、ボトムアップ・類推・パラメトリックの3手法で整理しています。
クリティカルパス法の基本ステップ
クリティカルパス法は7つのステップで進めます。
STEP1 タスクの洗い出しと分解(WBS)
すべての分析はWBSから始まります。
タスクの粒度が揃っていないと、ネットワーク図もクリティカルパスも正しく描けません。
工数見積りは、タスクの粒度が揃っていないと必ずブレます。
そのため、見積り作業の前に 「成果物ベースで作業を分解し、抜け漏れなくタスク化する」 ことが不可欠です。
まずはWBSで作業を構造化し、見積りの前提をそろえましょう。
▶ WBS(作業分解)の作り方|誰でも抜け漏れなくタスク化できる方法
WBSで成果物と作業を正しく分解すると、タスク粒度が揃い、依存関係の整理と見積り精度が大幅に向上します。
STEP2 依存関係を明確にする
どのタスクがどれに依存しているかを整理します。
例:
設計が終わらないと開発は始まらない
開発が終わらないとテストができない
依存関係が曖昧だと、正しいクリティカルパスが導き出せません。
STEP3 所要時間の見積り
各タスクの工数(所要時間)を設定します。
工数の見積り方法は次の記事で解説しています。
STEP4 ネットワーク図の作成
タスク同士の依存関係を線でつなぎ、開始→終了までの流れを可視化します。
PERT図・アローダイアグラムとも呼ばれます。
● どのタスクがどこにつながるか
● どこが並列でどこが直列か
● 最も時間がかかるルートはどれか
これが視覚的に分かるようになります。
STEP5 前進計算(フォワードパス)
プロジェクト開始から順に、
最早開始日(ES: Earliest Start)
最早終了日(EF: Earliest Finish)
を計算します。
EF = ES + 所要時間
この段階で「各タスクが最も早く終わる日」が分かります。
STEP6 後退計算(バックワードパス)
プロジェクト終了日から逆算して、
最遅開始日(LS: Latest Start)
最遅終了日(LF: Latest Finish)
を計算します。
LS=LF−所要時間
これにより「どこまでなら遅れても納期に影響しないか」が分かります。
STEP7 フロート(余裕時間)の計算とクリティカルパス特定
フロート(Total Float)とは、遅延しても納期に影響しない余裕です。
フロート = LS - ES または フロート = LF - EF
フロート = 0 のタスク
これがクリティカルパス上のタスクです。
クリティカルパスの見つけ方(実務のコツ)
理論よりも、実務では次の3つを意識すると精度が上がります。
● フロートが小さいタスクは疑似クリティカルパス
● レビュー・承認タスクはほぼクリティカルパス化する
● 「人の稼働待ち」や「外部依存タスク」はパスを圧迫しがち
特にWeb制作や開発に多いのが、
「担当者レビュー待ち」「顧客承認待ち」が納期を支配しているケースです。
ガントチャートとの違い
ガントチャートはスケジュールの可視化が目的であり、
クリティカルパスの算定まではできません。
ガントチャート=見た目のスケジュール管理
クリティカルパス法=納期を決定づける経路の特定
よく混同されますが、使う目的が異なります。
実務では
WBS → 工数見積り → クリティカルパス → ガントチャート
という順番が最適です。
クリティカルパス法を実務で活かすポイント
● 納期遅延はクリティカルパス上のタスクから発生する
● クリティカルパス外のタスクには優先度をつけてよい
● リソース配分・バッファ計画は“クリパス優先”が鉄則
● 外部依存タスクは最初にクリパス候補として扱う
クリティカルパスを正しく理解すると、「どこに手を入れれば納期が守れるか」を直感的に判断できます。
まとめ
クリティカルパス法は、プロジェクトの“詰みポイント”を初期段階で見つける強力なフレームワークです。
● 納期を決めるルートを可視化
● フロートで余裕を判断
● リソースとバッファの最適配分
● ボトムアップ見積りとの相性が抜群
工数見積りと併用することで、納期確度は一気に安定します。