目次
はじめに
本記事は、ビジネスコミュニケーションの基本である「報連相(報告・連絡・相談)」を、ゲーム形式で楽しく身につけるための入門編です。新人研修やチームビルディングで使える代表的なゲームを、ルール・運用のポイント・期待できる効果までわかりやすく紹介します。
目的
- 報連相の重要性を実感し、実務で使えるスキルにすること。
- チーム内の情報共有や意思決定をスムーズにすること。
報連相とは(簡単な具体例)
- 報告:作業の進み具合を上司に伝える。例)「資料は50%進みました」
- 連絡:予定や変更を関係者に知らせる。例)「会議は15時に変更します」
- 相談:判断に迷ったときに意見を求める。例)「この案で進めてよいでしょうか?」
この章の使い方
- 各ゲームの説明を読み、目的に合うものを選んでください。
- 実施前にルールを簡潔に伝え、所要時間や役割を明示してください。
本記事で学べること
- ゲームごとの具体的な進め方と準備物
- 実施例と運用上の工夫
- 組織での定着に向けた導入ポイント
まずは軽いゲームから始めて、少しずつ実務に結びつけていくことをおすすめします。
報連相パズル(報連相ゲーム)
概要
各プレイヤーに5枚のカードと1枚の指令書を配ります。指令書やカードは他人に見せたり口頭で伝えたりしてはいけません。チーム内の通信はメモのみで、1チームあたりのメモ枚数は50枚までです。メモには必ず送信者と受信者の名前を記載します。カード交換はメモで連絡可能な相手とだけ行えます。
目的
各メンバーが指定された種類のカードを5枚集め、マネージャー(管理者)の指令書にあるクリア条件を満たすことです。情報が分散しているため、報告・連絡・相談(報連相)を活用して最善策を見つけます。
ルール(主なポイント)
- 指令書とカードは秘密にする。口頭での説明は禁止。
- メモ上限はチームで50枚。必ず送り主と宛先を記載。
- カード交換はメモで連絡可能な相手間のみ。
- クリア条件はマネージャーの指令書にのみ記載。
進行手順
- 配布:各自にカード5枚と指令書1枚を配布します。
- 書面通信:メモで交渉・報告・相談を行います(例:「○○さん、赤カード1枚交換してください」)。
- 定期報告:決めた間隔で全体報告を行い、進捗を共有します。
- 判定:マネージャーが条件を確認し、クリア判定します。
注意点とファシリテーション
進行役はメモの枚数管理や時間配分を行います。メモが多すぎると混乱するため、重要な情報を簡潔に伝える癖を促しましょう。カード交換や交渉で独占が起きないよう観察してください。
推奨人数と所要時間
1チーム5〜6名、所要時間は45〜75分が目安です。
効果
分散情報の統合力、報連相の実践、交渉力と優先順位付けの訓練に有効です。
部課長ゲーム(Kゲーム)
目的
部長・課長・平社員に役割を分け、口頭禁止でメモだけを使って意思疎通します。報連相(報告・連絡・相談)の基本を体感し、情報伝達の大切さと意思決定の難しさを実感します。
準備物
- メモ用紙(複数)とペン
- 役割札(部長・課長・平社員)
- 情報カード(業務内容や顧客要求など)
- タイマー
役割と人数
標準は1チーム5名(部長1、課長2、平社員2)。7名も可能で、その際は部長1、課長2〜3、平社員は残りにします。役割ごとに見える情報を変えると効果的です。
ルール
- 口頭でのやり取りは禁止、メモのみで通信します。
- 初期配布で情報カードは各メンバーにランダムに配ります。部長には目標カードを渡すと良いです。
- 課長は複数の平社員からメモを集約し部長へ報告します。逆の指示は部長→課長→平社員の順で伝えます。
進行手順(例)
- ルール説明(5分)
- 情報配布(3分)
- 情報収集とやり取り(10〜15分)
- 部長の意思決定と最終指示作成(5分)
- 結果確認と振り返り(10分)
養える能力
役割理解、情報伝達力、意思決定力、リーダーシップ、協調性が高まります。書く・読む力や要点を絞る力も鍛えられます。
注意点とアドバイス
- メモは簡潔に。長文は混乱の元です。
- 字が読めないと進行が止まるので配慮してください。
- ロール交代をして複数回実施すると学びが深まります。
バリエーション
- 時間制限を厳しくして緊張感を出す。
- 一部に誤情報を混ぜて確認力を試す。
- 課長間で情報を共有するルールを加え、横の連携も促す。
バラバラ漢字パズル
目的
漢字を部首やつくりなどのパーツカードに分け、チームで組み合わせて1つの漢字や熟語を完成させます。協力の大切さ、報連相(ほうれんそう)やメモ取りの重要性を体感してもらいます。
準備物
- 漢字を分解したカード(部首・つくり・構成要素)
- テーブル、付箋、ペン、タイマー
- 正解一覧(進行役用)
進め方(基本)
- 4〜6人のチームに分けます。1チームに複数枚のカードを配布します。
- 制限時間(例:10分)内にカードを組み合わせて指定の漢字や熟語を作ります。
- 作業中は必ずメモを取り、役割(書記・発表者など)を決めます。
- 時間になったら各チームが完成文字を発表し、解説します。
難易度調整と例
- 初級:画数の少ない漢字や二文字語を作る(例:休、海、情報)
- 中級:画数の多い漢字や二文字・三文字(例:議、認識、協力)
- 上級:四字熟語や複数パーツを組む(例:意気投合)
学びのポイント
- 情報共有が早いほど解決が速くなります。書記のメモが思考を整理します。
- 役割分担と報連相で無駄な作業を減らせます。
注意点
- 部品の配布は公平に。読みや誤解を避けるため発音や意味の確認時間を設けます。
- 漢字の知識差が大きい場合は難易度を下げ、ヒントを用意してください。
伝言ゲーム(報連相ワーク)
目的
一般的な伝言ゲームを業務連絡風に行い、情報伝達の正確さと報連相(報告・連絡・相談)の大切さを体験します。伝わる過程で起きる誤解や情報の欠落を実感できます。
準備物と参加人数
- メモ用紙、タイマー、簡単な業務連絡文(例:会議時間変更、顧客名、資料締め切り)
- 6〜20人程度で行いやすいです。グループ分けすると効果的です。
ルールと進め方
- 原文を用意します(30〜50語程度の業務連絡文)。例:「明日の営業会議は10時→11時に変更。資料はAさんが作成、締切は本日17時。顧客Xの件を報告してください。」
- 1人目が口頭で次の人に伝えます。書いてはいけません。各伝達は1回のみとします。
- 最後の人が受け取った内容を発表します。
- 原文と発表内容を比較し、差異を確認します。
振り返り(ファシリテーションのポイント)
- どの情報が抜けたか、どの言葉が誤解を生んだかを具体的に示します。
- 「繰り返し」「数字や固有名詞の確認」「受け手の復唱」を推奨して、報連相で使える改善策を話し合います。
注意点と応用例
- 感情や主観を省いた事実ベースの伝え方を強調します。
- リモート環境ではチャットを禁止して音声のみで行うなど、制約を変えると学びが深まります。
- 最後に、日常業務での実践方法(ワンポイントで確認、ToDo化、共有フォーマットの活用)を共有します。
NASAゲーム
概要
宇宙飛行士になり、月面で不時着した想定で行う合意形成ゲームです。母船に戻るために有用な15個のアイテムを選び、その優先順位をチームで決めます。個人の判断とチームでの議論の違いを体験し、意思決定のプロセスを学びます。
準備物(例)
- アイテム一覧カード(20〜25種類)例:酸素ボンベ、食料、宇宙服の部品、通信機器、コンパス、地図、フレア、工具セット、発熱器、電池、救急セット、ロープ、望遠鏡、燃料タンク、ナイフ、太陽電池パネル、断熱シート、ライト、サンプル採取キット、緊急ブザー
- 筆記用具、タイマー、メモ用紙
ルール
- 各自で15個を選び順位をつけます(個人作業5〜10分)。
- チームで意見を交換し、合意の優先順位を作成します(討議20〜30分)。
- ファシリテーターが発表を取りまとめ、必要なら比較・フィードバックを行います。
進行のコツ
- 初めに各自の上位3つの理由を簡潔に共有します。理由を聞くことで根拠が見えます。
- 時間配分を決め、議論が長引かないようタイムキーパーを置きます。
- 全員の発言機会を確保し、強い意見に引きずられないようにします。
合意形成のポイント
- 根拠を数値や条件で示すと説得力が増します(例:酸素は消費率で優先度を説明)。
- 妥協点を見つけるために小グループで部分的に決め、最終調整で合流します。
- 賛成多数で決めるか、全員一致を目指すか目的に応じてルールを最初に決めます。
期待される効果
- 論理的思考と優先順位付けの訓練になります。コミュニケーションやリーダーシップの課題が見えやすく、振り返りで学びを深められます。
注意点
- 特定の人が議論を独占しないように配慮してください。意見の違いを否定せず、理由を聞く姿勢を大切にします。
ジェスチャーゲーム
ルール説明
一人がお題を見て、チームの他の人に言葉を使わずにジェスチャーだけで伝えます。見ている側が正解したら順番を交代し、制限時間内に何問当てられるかを競います。
準備と人数
用意するものはお題カード(紙やアプリで代用可)とタイマーだけです。4〜12人程度で楽しめますが、少人数でも複数ラウンドで盛り上がります。
進め方(例)
- チームを2組に分ける。順番を決める。
- 出題者はお題を確認し、タイマーをセット(30〜60秒推奨)。
- 言葉や音を発せず、身振り手振りでヒントを示す。
- チームが答えたら点数を記録し、次の人へ。時間切れで交代します。
学べること
ジェスチャーで伝える際に、観察力や想像力が鍛えられます。非言語コミュニケーションの重要性を体感し、チーム内での協力や役割分担が上手になります。
バリエーションと応用
- カテゴリー制(映画、職業、動物など)で難易度調整
- 制限ジェスチャー(表情のみ、片手のみ)で盛り上げる
- プレゼン練習として、言葉を後で付け加えて解説する練習も有効です
注意点と工夫
身体的負担に配慮し、無理な動きを避けます。分かりにくい場合はヒントの出し方をチームで事前に共有するとスムーズです。楽しく安全に進行してください。
ロゲイニング
ロゲイニングとは
ロゲイニングは、地図やチェックポイントを使って制限時間内に得点を競うチーム型アクティビティです。歩く・判断する・連携する要素が混ざるため、現場の判断力や報連相の速さ、信頼の醸成に直結します。
ねらい(職場での期待効果)
・制限時間内に優先度を決めて動く訓練になります。
・短い報告・連絡・相談で情報共有を回す練習になります。
・役割分担と信頼関係が成果に直結することを体感できます。
準備と役割
・エリアとチェックポイントを設定し、地図とルールを配布します。
・チームごとにリーダー、ナビゲーター、記録係、連絡係などを決めます。
・安全確認と連絡手段(携帯、集合場所)を必ず整えます。
実施の流れ
- 作戦会議で優先順位とルートを決めます。短時間で意思決定する練習です。
- 移動中は短い報告を繰り返し、状況変化に応じて役割を入れ替えます。
- 終了後に振り返りを行い、良かった点と改善点を共有します。
職場での具体例
・工事現場:優先度の高い作業箇所を効率よく回る訓練に応用できます。
・営業:訪問順や時間配分の最適化、顧客情報の素早い共有力向上に役立ちます。
・災害対応訓練:現場判断とコミュニケーションの初動力を高めます。
実施時の注意点
・安全第一で無理な移動は避けます。
・評価は個人の速さだけでなく、連携や意思決定の質も含めます。
・過度な競争に偏らない雰囲気づくりを心がけます。
モンスタービルディング
目的
報連相の重要性と他者の視点の違いを体感します。伝える力・受け取る力を同時に鍛え、チームワークや問題解決力を育てます。
準備物・人数・時間
- 紙、ペン、色鉛筆またはブロック類
- 4〜8人(チーム分け可)
- 30〜60分
進め方(手順)
- チームで1人を“設計者”に決めます。設計者だけがお題のモンスターの詳細を見ます。例:角が3本、羽があり、腕が4本。
- 設計者は口頭で特徴を伝えます。制作者は設計図を見ずに聞きながら制作または絵を描きます。時間は10〜20分程度。
- 完成後、設計者と制作側で照らし合わせます。違いがあればどこで誤解が生じたか話し合います。
- ロール交代して数回繰り返します。
ルール例
- 設計者は描写に専門用語を使わない
- 質問は1回だけ許可するなど制限を付ける
指導のポイント
具体的な形容詞や比喩を促してください。聞く側には「要点をメモする」「分からない箇所は即座に確認する」ことを習慣づけます。振り返りで、お互いの意図のずれを言語化する時間を必ず取りましょう。
学び・効果
言葉だけで伝える難しさと、相手の受け取り方の差を実感できます。伝える技術(順序立て、具体化)と受け取る技術(傾聴、確認)が同時に向上し、チームでの合意形成がスムーズになります。
ゲーム導入のポイントと効果
はじめに
ゲームを使った学びは、失敗を安全に経験できる点が強みです。記憶へ残りやすく、現場で同じミスを繰り返さなくなります。
ゲームがもたらす効果
- 体験として覚えるため暗記より定着しやすい
- チームでの意思疎通や役割理解が深まる
- 問題発見力と改善意識が高まる
実務に近い設計の重要性
実際の業務フローや判断場面を模した設定にします。身近な例を使うと参加者がすぐに関連付けできます。例えば在庫補充や接客対応の場面を再現します。
振り返り(PREP法の活用)
PREPは「Point(要点)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(再提示)」の順で話す方法です。振り返りでは事実→原因→改善策の順に整理し、最後に学びを明確にします。
導入事例
- 生活協同組合:共同購入の流れを模したゲームでミス防止と責任感を向上
- 小売販売業:レイアウトや接客のロールプレイで売上改善につなげた
導入時のポイント
- 目的を明確にする(習得する行動を定める)
- 実務に近いシナリオを用意する
- 振り返りに十分な時間を取る
- 成果は観察・アンケート・KPIで測定する
よくある落とし穴と対策
- 目的が曖昧:事前に期待する行動を示す
- 参加者が遠慮する:自由に発言できる雰囲気作りを行う
実施の簡単なステップ
- 目的設定 2. シナリオ作成 3. 実施 4. 振り返り(PREPで整理)5. フォローアップ(現場での確認)
導入は小さく始め、効果を確認しながら拡大するのが有効です。