目次
はじめに
「なぜか最後に予算が足りなくなる」「見積もったはずなのに追加費用が増えていく」そんな経験はありませんか?
コストマネジメントとは、あらかじめ決めた予算の金額の中で、プロジェクトを最後までやり切るための具体的な管理のことです。
やることは大きく3つだけです。
まず、プロジェクト全体でいくら使うのか総額をはっきり決めます。次に、その総額を人件費・外注費・材料費・広告費など、項目ごとに具体的な金額へ振り分けます。そして、実際に使ったお金が予定どおりかどうかを、毎月・毎週などタイミングを決めて数字で確認します。
このうち1つでも行っていないと、「とりあえず進める」「後で調整する」といった状態になり、気づいたときには予算オーバーが止まらなくなります。
まずは、自分の現場で「総額を明確に決めているか」「費目ごとに金額を割り当てているか」「実績と予算を定期的に照らし合わせているか」を、順番に確認してみてください。ここから一つずつ整理していきます。
コストマネジメントとは?

コストマネジメントとは、プロジェクトにかかるお金を「いくらまで使えるのか」を最初に決め、その範囲内で計画・実行・管理を行うことです。なんとなく予算を決めるのではなく、総額を確定し、作業ごとに配分し、進行中も実績と照らし合わせながら調整します。ここでは、具体的にどのような手順でコストを管理していくのかを順番に確認します。
プロジェクト全体の予算上限を確定する
プロジェクトを始める前に、「この案件には最大でいくらまで使えるのか」を金額で決めます。たとえば予算上限を500万円と決めたなら、人件費・外注費・システム利用料・広告費・交通費など、すべての支出はその500万円の中に収めます。
上限を決めずに進めると、途中で追加作業が発生するたびに費用が積み上がり、最終的な総額が読めなくなります。最初に経営者や発注者と合意した「これ以上は使わない」という金額を確定させ、その金額を超えない前提で計画を立てることが、コストマネジメントの出発点です。
工程ごとに予算を配分する
全体の予算上限を決めたら、その金額を工程ごとに分けます。たとえば総予算が500万円の場合、「企画に50万円」「設計に100万円」「開発に250万円」「テストに70万円」「リリース対応に30万円」というように、作業の区切りごとに具体的な金額を割り振ります。
工程ごとに金額を決めておかないと、ある工程で想定以上に使いすぎても気づけません。開発工程で予算を超過すれば、その時点で他の工程に回すお金が減ります。どの工程にいくら使えるのかを最初に数字で固定し、その範囲内で人員や作業内容を調整することが、コストマネジメントで行う予算配分です。
実績額と計画額を定期的に照合する
プロジェクトが始まったら、実際に使った金額と、あらかじめ決めていた計画上の金額を定期的に比べます。たとえば月末ごとに、「今月の人件費は80万円の予定だったが実績は92万円」「外注費は50万円の予定で実績は45万円」というように、項目ごとに数字で並べて確認します。
計画より多く使っている項目があれば、その時点で原因を特定します。作業時間が増えたのか、追加依頼が発生したのか、見積もりが甘かったのかを具体的に確認します。逆に予定より少ない場合も、その差額を他工程に回せるかを判断します。
この照合作業を週次や月次で続けることで、「気づいたら予算を超えていた」という事態を防ぎます。数字を定期的に突き合わせることが、コストマネジメントで予算を守るための具体的な管理方法です。
コスト削減とコストマネジメントの違い

コスト削減とコストマネジメントは、似ているようで目的がまったく違います。どちらも「お金を管理すること」には変わりませんが、見るタイミングと判断基準が異なります。すでに出ている支出を減らすのか、それとも最初に決めた予算の中に全体を収めるのか。この違いを理解していないと、場当たり的に経費を削るだけになり、プロジェクト全体の計画が崩れることがあります。まずは、それぞれが何を指しているのかを整理します。
コスト削減は今出ている支出を減らすこと
コスト削減とは、すでに発生している支出をその場で減らすことです。たとえば、毎月30万円かかっている外注費を20万円に見直す、月額1万円のツールを解約する、出張をオンライン会議に切り替えて交通費をゼロにする、といった具体的な行動が該当します。
すでに契約しているサービスの料金を再交渉する、人員を1名減らす、広告費を月50万円から30万円に下げるなど、「今払っているお金」を直接減らすのがコスト削減です。将来の計画を立て直すことではなく、現在の支出項目を見直して金額を小さくする行為を指します。
コストマネジメントは決めた予算の範囲に収めること
コストマネジメントは、「いくらまで使うか」を最初に決め、その金額を超えないように管理することです。たとえば総予算を500万円と確定したなら、人件費・外注費・システム費・広告費など、すべての支出を合計しても500万円以内に収めます。
途中で追加作業が発生した場合も、その都度「残り予算はいくらか」を確認します。開発工程で予定より30万円多く使ったなら、他の工程で30万円削るのか、仕様を減らすのかを具体的に判断します。単に支出を減らすのではなく、決めた上限を守るために金額を調整し続けることがコストマネジメントです。
コストマネジメントで予算を超えないためにやること

コストマネジメントで予算を守るには、「気をつける」だけでは足りません。プロジェクトが始まる前の見積もり段階から、進行中のチェック、変更が出たときの対応まで、具体的な行動を決めておく必要があります。どこにいくら使うのかを細かく分け、実際にいくら使っているのかを定期的に確認し、計画が変われば金額もその場で修正する。この流れを実行できているかどうかが、予算内で終わるかの分かれ目です。
見積もりを「作業ごと」に分けて金額を出す
見積もりは「一式◯◯万円」とまとめて出さず、作業単位まで細かく分けて金額を出します。たとえばWebサイト制作なら、「トップページデザイン10万円」「下層ページデザイン1ページあたり3万円×5ページ=15万円」「コーディング20万円」「テスト5万円」というように、作業ごとに分解して積み上げます。
システム開発なら、「要件定義40時間×単価8,000円=32万円」「画面設計30時間×8,000円=24万円」「実装120時間×8,000円=96万円」という形で、作業時間と単価を掛け合わせて計算します。
作業ごとに金額を出しておけば、どの工程で増減が起きたのかをすぐに把握できます。曖昧な一括見積もりにせず、具体的な作業単位まで分けて金額を出すことが、予算超過を防ぐための基本です。
進み具合と支出を毎月並べて確認する
毎月末に、「どこまで作業が進んだか」と「いくら使ったか」を同じ表に並べて確認します。たとえば全体の進捗が50%の時点で、予算500万円のうち300万円を使っていれば、消化率は60%です。この時点で「進み具合よりお金の減りが早い」と判断できます。
工程ごとにも確認します。開発工程が40%しか終わっていないのに、その工程の予算200万円のうち160万円を使っているなら、残り40%を40万円で終わらせるのは難しいと分かります。
進捗率と支出額を毎月並べて数字で比較すれば、赤字になる前に対策を打てます。作業の進み具合と実際の支出をセットで確認することが、予算超過を防ぐ具体的な方法です。
仕様変更があればその場で金額を見直す
仕様変更が出たら、その日のうちに金額を再計算します。たとえば「お問い合わせフォームを1つ追加する」「画面を2ページ増やす」「機能を1つ追加する」と決まった時点で、必要な作業時間を見積もります。追加で20時間かかり、単価が8,000円なら、16万円の増加です。
その16万円をどこから出すのかも同時に決めます。総予算500万円の中で吸収できるのか、別の機能を削るのか、発注者に追加費用として請求するのかをその場で判断します。
変更だけを先に進めて、金額を後回しにすると、気づいたときには予算を超えています。仕様が変わった瞬間に金額も更新することが、コストマネジメントで予算を守る具体的な行動です。
プロジェクトで行うコストマネジメントの流れ

プロジェクトで行うコストマネジメントは、思いつきで進めるものではありません。最初に何をいつまでに行うのかを決め、その内容をもとに必要な費用を計算し、予算として正式に確定させます。そして開始後は、実際の支出が計画どおりかを定期的に確認します。この一連の流れを順番どおりに行うことが、途中で予算を超えないための基本になります。
まずプロジェクトの作業内容と期間を決める
最初に、「何をやるのか」と「いつまでに終わらせるのか」を具体的に決めます。たとえば「企業サイトを新しく作る」という曖昧な表現ではなく、「トップページ1枚、下層ページ5枚、問い合わせフォーム1つを作成し、6月30日までに公開する」と作業内容と期限を数字で確定させます。期間も「できるだけ早く」ではなく、「4月1日開始、6月30日終了の3か月間」と日付で固定します。開発なら「要件定義2週間、設計3週間、実装6週間、テスト2週間」というように工程ごとの期間も決めます。
作業内容と期間が決まっていない状態では、必要な人員や工数が計算できず、予算も算出できません。何を・どれだけ・いつまでに行うのかを先に確定させることが、予算超過を防ぐための出発点です。
プロジェクトにかかる費用を見積もる
決めた作業内容と期間をもとに、実際にいくらかかるかを計算します。人件費は「担当者2名×1日8時間×20日×時給3,000円=96万円」というように、人数・時間・単価を掛け合わせて出します。外注があれば、見積書の金額をそのまま計上します。さらに、サーバー利用料月2万円×3か月=6万円、広告費月10万円×2か月=20万円、交通費実費5万円など、発生する支出をすべて項目ごとに洗い出します。
このように具体的な数字を積み上げて総額を出せば、「合計はいくらになるのか」が明確になります。感覚ではなく、人数・時間・単価・期間を使って計算することが、予算超過を防ぐための見積もりです。
プロジェクトの予算を確定する
見積もりで算出した総額をもとに、「このプロジェクトに使う金額はここまで」と最終的な予算を確定させます。たとえば積み上げた結果が480万円だった場合、予備費20万円を加えて上限500万円と決め、関係者全員で合意します。このとき、「だいたい500万円」ではなく、「上限500万円、これを超える場合は事前承認が必要」と条件も明確にします。口頭だけで済ませず、見積書や予算表に金額を記載し、承認日も残します。
予算を確定させないまま作業を始めると、追加費用が発生しても判断基準がありません。金額を数字で固定し、合意した状態にしてから進めることが、予算超過を防ぐための具体的な行動です。
プロジェクトの支出を毎月確認する
毎月末に、その月に実際に支払った金額をすべて集計します。人件費は勤怠データから「今月の作業時間×単価」で計算し、外注費は請求書の金額をそのまま記録します。サーバー費用や広告費などの固定費も、銀行引き落とし額を確認して入力します。たとえば総予算500万円のうち、1か月目で120万円、2か月目で210万円使っているなら、累計330万円です。この時点で残りは170万円と分かります。工程ごとの予算と並べて確認すれば、「開発費は予定200万円に対してすでに180万円使っている」といった状況も把握できます。
毎月数字を確認しないと、予算の残額が分からないまま作業を続けることになります。支出を月単位で記録し、累計と残額を具体的な金額で把握することが、予算超過を防ぐための基本です。
まとめ
コストマネジメントは、「いくらまで使うのかを決める」「その金額を工程ごとに分ける」「実際に使った金額と計画を定期的に比べる」という3つの手順で進めます。順番は必ずこの通りです。
まず総予算を500万円など具体的な金額で確定させます。次に、その500万円を企画・設計・開発・テストといった工程ごとに配分します。そして、毎月の支出を集計し、進捗率と支出額を並べて確認します。仕様変更が出た場合は、その場で追加金額を再計算し、予算内で収まるかを判断します。
どれか1つでも抜けると、予算は管理できません。上限を決めずに始めれば総額が膨らみ、配分を決めなければ特定工程で使いすぎます。実績を確認しなければ、超過に気づくのが遅れます。
まずは自分の現場で
・総予算が数字で確定しているか
・工程ごとの金額が決まっているか
・毎月の実績と計画を並べて確認しているか
この3点をチェックします。この流れが実行できていれば、プロジェクトは予算内で進められます。