目次
はじめに
プレゼン資料は「伝えるための設計図」です。本書ではパワーポイントを使って、伝わる構成をつくる方法をわかりやすく解説します。目的やターゲットの明確化から、定番の構成パターン、具体的なスライド要素、作成のコツ、実践テンプレート、応用テクニックまで順を追って学べます。
この章で伝えたいこと
本章では本書の狙いと読み進め方を示します。まずは「何のために資料を作るのか」「誰に伝えるのか」を整理することが最初の一歩です。目的がはっきりすれば、必要な情報と不要な情報が見えてきます。
想定する読者
・社内で報告や提案をする方
・営業や企画で説得力を高めたい方
・資料作成の時間を短縮したい方
これらに当てはまる方向けに、実務で使える実例とテンプレートを用意しています。
読み方のコツ
まず第2章で基本ポイントを押さえ、続けて第3〜5章で構成と作成法を身につけてください。第6〜7章でテンプレートと応用を試し、最後に振り返る流れが効率的です。章ごとに練習課題やチェックリストを載せますので、実際に手を動かしながら進めてください。
プレゼン資料の構成を考える前に押さえるべき基本ポイント
1. 目的を明確にする
- まず「何のために話すのか」を一文で書きます。例:「新サービス導入の承認を得る」「顧客へ製品の価値を理解してもらう」。目的が決まれば、資料の優先順位が決まります。
2. ターゲット(聞き手)を定義する
- 誰に向けて話すのかを具体化します。役職、知識レベル、関心事を想像します。例:経営層なら結論重視、現場なら手順や具体例を重視します。
3. 伝えたい核(メッセージ)を一文でまとめる
- 資料全体で伝えたい「核」を一文にします。スライド作成や話す内容はこの核に戻して整えます。
4. 最終的な行動・理解を決める
- 聞き手に期待する行動(承認、問い合わせ、導入など)を明確にします。行動に結びつく情報を優先して載せます。
5. 聞き手の立場と期待を意識する
- 利点だけでなく、懸念や反論も想定しておきます。反論の対策をスライドに入れると説得力が増します。
6. 情報量とスライドのバランス
- 1スライドに詰め込みすぎないこと。見出しと要点で1〜2分で理解できる量を目安にします。
7. 時間と場面に合わせて優先順位を付ける
- プレゼン時間が短ければ結論と根拠に絞ります。時間がある場面では背景や詳細も丁寧に示します。
チェックリスト(簡単)
- 目的は一文で書けるか
- 聞き手は誰か明確か
- 伝えたい核はあるか
- 聞き手に期待する行動は明確か
- 各スライドの情報量は適切か
これらを最初に押さえると、構成設計がぶれずに進められます。
定番のプレゼン構成パターン
三段構成(序論→本論→結論)
特徴:主題をはっきり示し、詳しく説明して結論で締めます。聞き手が流れを追いやすいです。
使いどころ:一般的な報告や提案に向きます。
作り方のポイント:序論で目的と要点を示し、本論で根拠や事例を並べ、結論でアクションを提示します。
例:目的→データと分析→提案と次の一手。
問題→原因→解決策型
特徴:課題を明確にし、原因を分析して解決策を示します。
使いどころ:改善提案やトラブル報告に有効です。
作り方のポイント:問題を数値で示し、原因の検証を簡潔に示して実行可能な対策を提示します。
例:売上低下→顧客離れ→改善施策(A/Bテスト)。
PREP法(結論→理由→具体例→再確認)
特徴:要点を先に提示してから裏付けを示すため説得力が高まります。
使いどころ:短時間で主張を伝える場面に適します。
作り方のポイント:結論を一文で、理由は2〜3点、具体例は短く明確に。最後に結論を繰り返します。
例:結論(導入すべき)→理由(効率向上など)→導入事例→結論再提示。
SDS法(結論→詳細→結論)
特徴:PREPに似ますが、詳細説明を濃くする構成です。
使いどころ:技術説明や計画の説明で使います。
作り方のポイント:冒頭で結論、続けて段階的に詳細を説明し、再度結論で締めます。
トピカル構成
特徴:トピックごとに独立した章を並べます。
使いどころ:複数テーマを並列で扱うときに便利です。
作り方のポイント:各トピックの見出しを明確にし、優先度を示します。
階層的構成
特徴:全体→中項目→小項目と階層化して示します。
使いどころ:複雑な情報を整理して見せるときに有効です。
作り方のポイント:最初に全体像を示し、段階的に詳細へ落とし込みます。
パワポ資料作成の具体的な流れと各構成要素
全体の流れ
パワポ作成は「アウトライン作成→各スライド詳細作成→まとめ(結論・行動喚起)」の順で進めます。最初に伝えたいことを一言で決め、目次を作ると軸がぶれません。
各構成要素と役割
- タイトル:主題を端的に示します。副題で補足すると親切です。
- 本文:事実や説明を簡潔に。1スライド1メッセージを意識します。
- 注釈・出典:データや根拠は出典を明記して信頼性を高めます。
- ページ番号・管理番号:配布資料や修正管理に役立ちます。
スライド別の作り方(例)
- 表紙:タイトル、発表者名、日付。視線を引く短い副題があると良いです。
- 目次:全体像を提示します。聞き手の期待値を作ります。
- 問題提起:現状と課題を示し、聞き手が共感できる事実を載せます。
- 解決案:具体的な提案を箇条書きで示します。成果の見込みを添えると説得力が上がります。
- 根拠・証拠:図表や数値で裏付けします。グラフは一つの要点に集中させます。
- 結論・行動喚起:最も伝えたい一文と次のアクションを明確にします。
実際の手順(ステップ)
- 目的を一文で書く。2. 目次を作る。3. 各見出しに要点を書く。4. 図表や箇条書きを入れる。5. 注釈・出典とページ番号を付ける。6. 最後に声に出して読む、または第三者に確認してもらう。
見た目の基本ポイント
文字は読みやすい大きさにし、色は3色以内に抑えます。余白を生かし、詰め込みすぎないようにします。箇条書きは3~5点が目安です。
チェックリスト(短い)
- 主題は一文で示せるか
- 1スライド1メッセージか
- 出典を明記しているか
- 結論と次の行動が明確か
わかりやすく伝わるパワポ資料作成のコツ
1スライド1メッセージ
伝えたい情報は一つに絞ります。複数の結論や数値を詰め込むと受け手が混乱します。見出しで結論を先に示し、詳細は箇条書きや注釈で補足します。
図表・グラフは用途に合わせて使う
数値を示すときはグラフ、関係性や流れは図、対比は表を選びます。不要な目盛りや線は削除し、強調したい点だけ色や矢印で示します。図は必ず簡潔なキャプションを付けます。
フォントと色使いは統一してシンプルに
本文は可読性の高いフォントを使い、見出しと本文でサイズ差をつけます。色は2〜3色以内で配色し、コントラストを確保します。強調は太字や色で行い、過度な装飾は避けます。
余白を活かし装飾は最低限に
余白は情報の区切りとなり、読みやすさを高めます。背景画像や派手な罫線は控え、重要な要素に視線が向かうように配置します。
情報設計を意識する
結論→理由→補足の流れを基本に設計します。受け手の知識レベルを想定し、不要な専門用語は省きます。
記憶に残す工夫
相手に残したいキーワードをスライドや口頭で繰り返します。箇条書きの最初と最後に同じ語を置く、重要スライドで色や図を再利用するなど、反復で印象を強めます。
実践チェックリスト(簡易)
- 1スライドに伝えたいことは一つか
- 図表は目的に合っているか
- フォント・色は統一されているか
- 余白は適切か
- キーワードを繰り返しているか
このコツを意識すると、見やすく伝わる資料を効率的に作れます。
実践例—構成テンプレートの使い方
はじめに
三段構成とPREP法は、どちらも伝わりやすさを高める定番のテンプレートです。ここでは具体的な使い方と、提案内容や目的に合わせた応用例を示します。実際のスライド案も付けますので、そのまま使えます。
三段構成の基本(タイトル/序論/本論/結論)
- タイトル:要点を一行で示します(例:「コスト削減案:年間20%」)。
- 序論:目的と流れを簡潔に伝えます。聴衆の関心を引く問いや現状の問題点を入れます。
- 本論:主要な根拠や対策を3点程度に絞って示します。各点は「結論→根拠→事例」の順で短くまとめます。
- 結論:提案の核と次のアクションを明確にします。意思決定を促す一文を必ず入れます。
PREP法の基本(要点→理由→具体例→要点再確認)
- 要点(Point):最初に結論を示します。見出しとして強く出します。
- 理由(Reason):要点を支える主な理由を2〜3つ挙げます。
- 具体例(Example):実際のデータや短い事例で裏付けます。
- 要点再確認(Point):最後に結論を繰り返し、行動を促します。
PREPは短時間で説得したい場面や、1スライドごとに主張を明確にしたいときに向きます。
テンプレートの使い分け方
- プレゼン全体は三段構成で骨組みを作ります。各大きな論点はPREPで深掘りすると効果的です。
- 時間が短い報告や会議のひとつの提案は、PREPだけでまとめると伝わりやすくなります。
実際のスライド例(6枚の短い案)
- タイトル(提案名と要点)
- 目次/序論(目的と流れ)
- 現状と課題(要点を一つに絞る)
- 提案(PREPで提示:結論→理由→事例)
- 効果と数値根拠(本論:3点に分ける)
- 結論と次のアクション(決裁依頼や期限)
作成時のチェックリスト
- 聴衆の期待に合わせてメッセージを決める
- 1スライド1メッセージを守る
- 図表は要点を補強するものだけ使う
- 最後に必ず次のアクションを示す
- 時間配分を想定して枚数を調整する
以上を元に、自分の提案内容と目的に合わせてテンプレートを調整してください。
構成を活かすための応用テクニック
1) フレームワークを組み合わせる
複数の構成パターンを場面に合わせて組み合わせます。たとえば「問題→原因→対策」+「ケーススタディ」で説得力を高めます。短時間なら要点を先に示す「結論ファースト」を中心にし、詳細は補助スライドで用意します。
2) 聞き手の知識レベルに合わせる
聞き手が専門家か一般の方かで説明の深さを調整します。専門家には根拠やデータを示し、一般向けには図や例で直感的に伝えます。冒頭で期待値を確認すると効果的です。
3) 情報の密度とスライド枚数の調整
一枚に詰め込みすぎないことを心がけます。1スライド1メッセージを基本に、必要なら補足資料で詳細を渡します。時間が短い場合は要点を絞り、質問で補う設計にします。
4) 視覚要素で構成を強化する
見出しの階層、アイコン、色の使い分けで構成の流れを視覚化します。図表は結論を強調する形で注釈を付けると理解が速まります。
5) 練習とフィードバックの活用
構成を変えたバージョンでリハーサルし、同僚や想定聴衆の反応を取ります。反応に応じて順序や深さを調整すると本番で伝わりやすくなります。
6) 応用例(短時間・意思決定・教育)
短時間: 結論→根拠3点→アクション。意思決定: 選択肢と影響度を比較表で提示。教育: 概念→例→演習の流れで理解を定着させます。場面ごとにテンプレを用意しておくと対応が早くなります。
まとめ—構成設計が「伝わるプレゼン」の第一歩
プレゼン資料は見た目より先に「何を誰に伝えるか」を明確にすることが成功の鍵です。
目的と相手を最優先に
- 目的(意思決定、報告、説得など)を一文で表現します。
- 相手の知識レベルや関心を想定して情報の深さを調整します。
構成パターンで論理の流れを作る
- 結論→理由→具体例の順に示すと理解が早まります。
- 導入で興味を引き、本論で根拠を示し、結びで行動を促します。
スライドは一枚一メッセージ
- 1枚あたり伝えることを絞り、見出しで意図を先に示します。
- 図や箇条書きを活用し、文字を詰め込みすぎません。
見やすさと印象を意識する
- 余白、フォントサイズ、色使いを統一します。
- 要点は強調し、視線の誘導を設計します。
実践チェックリスト
- 目的と想定聴衆は明記したか
- 伝えたい結論は1文で言えるか
- スライドごとに主題が明確か
- 図表は要点を補強しているか
- 2分間練習で流れが自然か
構成設計を丁寧に作れば、伝わるプレゼンの土台ができます。心を込めて準備すれば、聞き手の理解と共感が深まります。