目次
はじめに
背景と目的
現代の組織は変化が速く、意思決定や人材育成、目標管理などに一貫した考え方が求められます。本ドキュメントは「組織運営 フレームワーク」に関する情報を整理し、現場で使える知識に落とし込むことを目的とします。
本ドキュメントで扱うこと
代表的なフレームワーク(例:MVV、マッキンゼーの7S、OKRなど)の紹介と、それぞれの使いどころ、実践ステップを分かりやすく解説します。フレームワークの概念だけでなく、管理職や経営層が実務で使う際のポイントも示します。
想定する読者
・中堅~管理職の方
・組織づくりに関心のある経営者や人事担当者
・フレームワークを業務に落とし込みたいメンバー
具体的な事例を交えているので、初めて学ぶ方にも役立ちます。
使い方(読み方のヒント)
まず全体を通読し、関心のある章を実務に当てはめて試してください。小さな改善から始めると変化を実感しやすいです。
組織運営にフレームワークが必要な理由
はじめに
組織運営は人の判断や経験に大きく頼りがちです。経験豊かな経営者やマネージャーの”勘”は頼りになりますが、属人化すると意思決定のばらつきや継続性の欠如を招きます。
属人化が招く具体的な問題
- 判断基準が個人ごとに異なり、部署間で優先順位が食い違う。
- 新人が入っても教える人によってやり方が変わり、再現性が低い。
- 問題が表面化してから対応するため、根本原因に気づきにくい。
フレームワークの効果(具体例を交えて)
フレームワークは判断の共通語を提供します。たとえば採用で「カルチャーフィット」をどう評価するか基準化すれば、面接官ごとの差が減ります。プロジェクトの優先度も評価軸を決めれば説明しやすくなります。暗黙知を形式知に変えて、ズレを論理的に点検できます。
いつ優先して導入すべきか(場面別)
- 人員が増えて情報共有が追いつかないとき(例:10人→50人の増員)。
- 新戦略や新事業を実行するとき。
- 合併・組織再編で判断基準をそろえる必要があるとき。
導入時の注意点
フレームワークは万能ではありません。簡潔で実務に合うものを選び、現場の声を取り入れて運用で改善してください。あまり厳格に運用すると柔軟性を失うことがあるので、運用ルールは定期的に見直します。
組織運営・組織開発でよく使われる代表的フレームワーク一覧
以下では、組織運営や組織開発で実務的に使いやすい代表的フレームワークをわかりやすく紹介します。専門用語は最小限にし、具体例を添えて説明します。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
組織の目的(ミッション)、将来像(ビジョン)、行動指針(バリュー)を明文化します。例:地域の子ども支援NPOなら「すべての子どもが安心して学べる地域をつくる」がミッションになります。
マッキンゼーの7S
戦略・構造・制度・共有価値・スキル・スタッフ・スタイルの7つを点検する枠組みです。組織変更やM&A後の調整で有効です。
OKR(Objectives and Key Results)
目標と成果指標を短期で管理します。例:売上目標(Objective)と月ごとの新規顧客数(KR)を設定します。
タックマンモデル
チームが形成(Forming)、混乱(Storming)、規範化(Norming)、遂行(Performing)と成長する過程を示します。新チーム立ち上げ時の期待値管理に役立ちます。
アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)
問題探しよりも、うまくいっている事例を深掘りして学びを広げます。職場の良い実践を拡げたいときに向きます。
ワールドカフェ
小グループで自由に対話を回し、組織の知恵を引き出す手法です。合意形成やアイデア創出の場で使いやすいです。
特にMVV・7S・OKRは日々の運営と直結します。以降の章でこれらを詳しく解説します。
組織の“OS”をつくる:MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
MVVとは
MVVは「ミッション(存在意義)」「ビジョン(理想像)」「バリュー(行動指針)」の3要素です。組織の“OS”になり、日々の判断や文化を左右します。例:ミッションは「人々の移動を快適にする」、ビジョンは「2030年に地域交通の第一選択になる」、バリューは「安全第一/おもてなし/改善を続ける」のように定めます。
各要素の役割と具体例
- ミッション:なぜ存在するかを短く言います。採用広告や社内イントロで使いやすい言葉にします。例:「学びを通じて人生を豊かにする」。
- ビジョン:到達したい未来を描きます。数年後の姿と指標を示すと現実味が出ます。例:「5年で会員数100万人」。
- バリュー:日々の行動指針です。具体的な行動例を添えて運用します。例:「お客様目線で提案する→提案前に3つの顧客メリットを確認する」。
MVVの効果
意思決定の一貫性が向上し、社員の帰属意識やエンゲージメントが高まります。採用や評価の基準も明確になり、現場で迷いが減ります。
策定と浸透のステップ
- Whyの言語化:創業者や社員のストーリーを集め、存在意義を短文にします。ワークショップがおすすめです。
- Whereの可視化:具体的な数値やイメージでビジョンを描きます。ロードマップを作るとよいです。
- Howの定義:バリューを3〜5項目に絞り、行動指標を付けます。評価面談に組み込みます。
- 浸透・運用:社内共有、オンボーディング、定期的な振り返りやKPIで運用します。日常の会話や会議でMVVを参照する習慣を作ると定着しやすいです。
実務的に短く、具体的に定め、繰り返し使うことが肝心です。
組織を構造的に診断する:マッキンゼーの7Sフレームワーク
概要
マッキンゼーの7Sは、組織を7つの要素で多角的に見る枠組みです。要素を「ハード(戦略・構造・システム)」と「ソフト(スキル・スタッフ・スタイル・共有価値観)」に分け、現状のズレを可視化します。組織変革やプロジェクト立ち上げの前に使うと効果的です。
7つのS(わかりやすく)
- 戦略(Strategy):何を目指すか。例)新商品で市場シェア拡大
- 構造(Structure):組織や権限の配置。例)事業部制かマトリクスか
- システム(Systems):日々の業務ルールやIT。例)評価・報告の仕組み
- スキル(Skills):チームが持つ能力。例)営業力や開発力
- スタッフ(Staff):人員や採用の方針。例)中途比率や年齢構成
- スタイル(Style):リーダーの行動様式・文化。例)指示型か自律型か
- 共有価値観(Shared Values):組織の核となる考え方。例)顧客第一や挑戦重視
診断の進め方(実務)
1) 各Sについて現状を短い文章で書く
2) 理想像と差を洗い出す(何が弱いか明確に)
3) ハードとソフトのどこが不整合か優先順位をつける
4) 具体施策を立て、短期のシステム改善と中長期の人材育成を組み合わせる
よくあるズレと対応例
- 戦略は成長だがシステムはコスト抑制で人が疲弊→評価制度や業務分配を見直す
- スキル不足で戦略達成が難しい→外部採用と育成を並行実施
使うときの注意点
ソフト面は定性的になりやすいので、具体例や小さな指標を設定して測定してください。現場の声を入れると実行可能な改善策が出ます。