目次
はじめに
本資料の目的
本資料は、ビジネスマナーにおける言葉遣いの重要性と実践的な例文をやさしくまとめたガイドです。敬語の種類や使い分け、シーン別の例文、よく使う言い換え表現、クッション言葉、注意すべきマナー違反までを網羅的に扱います。
誰に向けているか
新人や若手社員、言葉遣いに自信がない方、改めて基本を確認したい方に役立つ内容です。経験者も状況に応じた言い回しの参考にしてください。
本書の使い方
各章は短めにまとめ、例文を中心に掲載します。まず基本を理解してから、シーン別の例を読み、自分の言葉に置き換えて練習してください。テンプレートはそのまま使えますが、相手や場面に合わせて調整することをおすすめします。
大切にしてほしい視点
言葉は相手への敬意と仕事の円滑さを左右します。丁寧さと分かりやすさを両立させ、相手の立場を想像して使い分けてください。
以降の章で具体例を順に紹介します。どうぞ気軽に読み進めてください。
ビジネスマナーにおける言葉遣いと例文集の概要
概要
ビジネスマナーでは、正しい言葉遣いが信頼を築き、コミュニケーションを円滑にします。特に日本の職場では敬語やクッション言葉の使い分けが重要です。本章では本書全体の方向性と、収録している例文の構成を分かりやすく示します。
本章の目的
・言葉遣いの基本を短く把握していただくこと
・どの場面でどの例文を使えばよいかを示すこと
・NG表現や言い換えの方針を予め知っていただくこと
収録内容の概要
・基本の敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)のポイント
・シーン別の例文(挨拶、報告、依頼、断り、謝罪など)
・よくあるNG例と適切な言い換え
・クッション言葉の具体例と使い方のコツ
使い方のポイント
・例文はそのまま使える表現と、状況に合わせて調整する表現に分けています。短く、相手を尊重する語尾を心がけてください。
・最初は基本例を音読して慣れると実践で使いやすくなります。
・職場ごとに慣習が異なるため、上司や先輩の言い回しを参考に微調整してください。
ビジネスマナーで重要な「言葉遣い」とは
敬語の基本
敬語は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三つに分かれます。尊敬語は相手の動作や立場を高めて敬意を示します。謙譲語は自分や自社の動作をへりくだって表現し、相手を立てます。丁寧語は語尾を「です・ます」にして話を丁寧に伝えます。
よく使う例(代表的な動詞)
- 行く/来る/いる:尊敬語「いらっしゃる」、謙譲語「参る/伺う」、丁寧語「行きます・来ます・います」
- 言う:尊敬語「おっしゃる」、謙譲語「申す・申し上げる」、丁寧語「言います」
- する:尊敬語「なさる」、謙譲語「いたす」、丁寧語「します」
実践のコツ
- 相手の行為は尊敬語、自分の行為は謙譲語で表現します。クライアントや上司の動作には尊敬語を使います。社内の自分や部署の行動は謙譲語で述べます。
- 丁寧語で文全体を統一し、急にくだけた表現を混ぜないようにします。
- 二重敬語(例:「おっしゃられる」)や過剰な敬語を避けます。意味が重なって不自然になります。
クッション言葉で柔らかくする
依頼や断りには「恐れ入りますが」「お手数をおかけしますが」「差し支えなければ」などを先に付けると印象が和らぎます。例:「恐れ入りますが、明日までにご確認いただけますでしょうか。」
注意点チェックリスト
- 主語を意識して敬語を選ぶ
- 敬語の種類を混同しない
- 相手との関係に応じて言葉の硬さを調整する
日常的に使って慣れると、自然で失礼のない言葉遣いが身に付きます。
シーン別:よく使う言葉遣いと例文
1. 挨拶・自己紹介
短くはっきりと、相手への配慮を込めます。
- 初対面: 「はじめまして、○○会社の山田と申します。本日はよろしくお願いいたします。」
- 電話: 「お電話ありがとうございます。○○の山田でございます。」
2. 名刺交換
動作と一緒に一言添えると丁寧です。
- 渡す: 「お名刺を失礼いたします。どうぞよろしくお願いいたします。」
- 受け取る: 「頂戴いたします。大切に拝見します。」
3. 感謝
具体的な理由を添えると誠意が伝わります。
- 「ご対応いただき、誠にありがとうございます。」
- 「お手数をおかけし、ありがとうございました。」
4. 謝罪
事実と謝意を簡潔に述べます。
- 「このたびはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。」
- 「至急対応いたします。まずはお詫び申し上げます。」
5. 依頼・お願い
相手の負担を配慮した表現を使います。
- 「恐れ入りますが、〜していただけますでしょうか。」
- 「お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
6. 質問・確認
確認は柔らかく、相手の同意を促します。
- 「念のため確認させていただきますが、〜でよろしいでしょうか。」
- 「差し支えなければご教示ください。」
7. 指示・了承・報告
受けた内容は明確に復唱します。
- 指示受領: 「承知しました。速やかに対応いたします。」
- 報告: 「ご報告いたします。現在の進捗は〜です。」
8. 電話対応
状況に応じたひと言を忘れずに。
- 取り次ぐ: 「少々お待ちください。ただいまお繋ぎいたします。」
- 折り返し: 「折り返しご連絡いたします。ご都合の良い時間を教えてください。」
9. ビジネスメール
件名、冒頭、本文、結びを整えます。
- 件名: 「打ち合わせ日時のご確認」
- 冒頭: 「いつもお世話になっております。○○の山田でございます。」
- 結び: 「何卒よろしくお願い申し上げます。」
よく使う言い換え表現・NG例
ビジネスの場では、カジュアルな言い回しを丁寧な表現に言い換えるだけで印象が大きく変わります。ここでは代表的な言い換え例と、NG例の代替表現をわかりやすく紹介します。
- 「わかりません」→「分かりかねます/確認いたします」
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理由説明を添えると印象がよくなります(例:詳細を確認し、折り返しご連絡いたします)。
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「すみません」→「申し訳ございません/恐れ入ります」
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軽い詫びには「恐れ入ります」、深い謝罪には「申し訳ございません」を使います。
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「了解しました」→「承知いたしました/かしこまりました」
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上司や取引先には「承知いたしました」や「かしこまりました」が無難です。
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「大丈夫ですか?」→「いかがでしょうか/ご都合いかがでしょうか」
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相手の都合を伺うときは丁寧に表現します。
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「ちょっと待って」→「少々お待ちください」
- 目の前での一時停止や電話対応に使います。
NG例とその理由
- 「オッケー」「了解」:カジュアルすぎて失礼に聞こえる場合があります。→「承知いたしました」
- 「できない」:断る際は「対応が難しいため、代替案をご提案いたします」など丁寧に説明します。
使い分けのコツ
- 相手と場面の敬語レベルに合わせる
- 短くても礼儀正しく伝える
- 必要なら理由や次の対応を添えると安心感を与えます。
日常の言い換え練習を続けると、自然に丁寧な表現が身につきます。
クッション言葉の例
依頼や断りを柔らかく伝える言葉を「クッション言葉」と呼びます。相手の気持ちに配慮して印象を良くする効果があります。代表的な言葉と具体例を紹介します。
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恐れ入りますが:依頼の前につけると丁寧です。
例)恐れ入りますが、資料をお送りいただけますでしょうか。 -
お手数をおかけいたしますが:相手の負担をねぎらう表現です。
例)お手数をおかけいたしますが、再確認をお願いいたします。 -
申し訳ございませんが:断りや謝罪の場面で使います。
例)申し訳ございませんが、その日は予定が入っております。 -
よろしければ:提案や選択肢を示すときに使います。
例)よろしければ別日にご調整いただけますでしょうか。 -
せっかくですが:感謝を示しつつ断るときに便利です。
例)せっかくですが、今回は見送らせていただきます。 -
恐縮ですが/もし差し支えなければ:確認や小さな依頼に使います。
例)恐縮ですが、ご都合の良い時間を教えていただけますか。
使い方のポイント
- 依頼はクッション言葉の後に要点を簡潔に伝えます。
- 断るときは感謝や謝意を先に述べると角が立ちません。
- 多用すると曖昧に聞こえるため、必要な場面で適度に使ってください。
第7章: 注意点・マナー違反の例
一般的に避けるべき行動
- 上司より先にエレベーターを降りる
- 理由: 目下の人が先に降りると配慮に欠ける印象を与えます。
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対策: 上司が先に降りるのを待ち、扉を支えるなどの気配りをします。
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名刺の裏にメモをする
- 理由: 名刺は相手への尊重を示すものです。裏に書くと粗雑に見えます。
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対策: メモは別紙やメモ帳、スマホのメモ機能を使います。
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口頭と文章で「御社」「貴社」を使い分けない
- 理由: 場面に応じた表現を使わないと誤解や不快感を与えます。
- 対策: 口頭では「そちら様/御社」、書面では「貴社」を基本に場面を意識します。
コミュニケーションでの注意点
- 電話やオンライン会議で相手を長く待たせる
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対策: 予定が伸びそうならすぐに連絡し、待たせる時間を最小限にします。
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会議中のスマホ操作や私語
- 理由: 集中していない印象を与えます。
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対策: 可能な限り電源を切るかサイレントにし、緊急以外は触らないようにします。
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遅刻や無断欠席
- 対策: 早めに連絡し、理由と対応を明確に伝えます。
書面・メールでの注意点
- 宛名の誤りや誤送信
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対策: 送信前に宛名・添付ファイルを必ず確認します。
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用語や敬語の誤用(過剰敬語・二重敬語)
- 対策: 短く分かりやすい敬語を使い、文章は一度簡潔に見直します。
身だしなみ・対面でのマナー
- 食べ物や香水の強い匂いを持ち込む
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対策: 匂いの強いものは避け、清潔感を優先します。
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会議や訪問を途中で抜けるときに断りをしない
- 対策: 退出が必要なら事前に伝えるか、場を外す際に一言断ります。
どの例も相手への配慮に欠けると感じさせる点が共通です。日常の小さな行動を見直すことで信頼につながります。
まとめ
ビジネスシーンでは、言葉遣いが相手への印象を大きく左右します。本書で扱ったポイントを短くまとめます。
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敬語は基本を押さえる:尊敬語・謙譲語・丁寧語を場面に応じて使い分けます。たとえば、上司には敬語、社内の同僚には丁寧語で十分です。
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クッション言葉を活用する:依頼や断りの前に「恐れ入りますが」「お手数ですが」を添えると柔らかく伝わります。
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言い換えで印象を整える:直接的な表現は角が立ちやすいので、「〜できますか?」や「〜していただけますか?」に言い換えます。
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シーン別の例文を覚える:電話・メール・対面それぞれでよく使う定型文を準備しておくと安心です。
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NG例と注意点に留意:断定的な言い方や命令口調、早口は避けましょう。相手の立場や状況を一度考えてから話す習慣をつけてください。
実践のコツは、短い定型文を繰り返し練習して自分のものにすることです。まずは今日から一つ、使いやすいフレーズを取り入れてみてください。