目次
はじめに
「フィードバック制御の伝達関数とは何だろう?」
「閉ループ伝達関数や開ループ伝達関数との違いがよく分からない」と悩んでいませんか。
制御工学を学び始めると、教科書や講義で伝達関数の式が出てきますが、ブロック線図と数式のつながりが理解できず、「どの式を使えばよいのか」「なぜ閉ループと開ループを分けて考えるのか」が分からないまま手が止まってしまうことがありますよね。
この記事では、フィードバック制御の伝達関数の基本から、閉ループ伝達関数・開ループ伝達関数との違い、計算式の考え方まで順を追ってわかりやすく説明していきます。
フィードバック制御と伝達関数の基本

フィードバック制御の伝達関数を理解するには、まずフィードバック制御そのものの考え方と、伝達関数が何を表すのかを押さえることが大切です。
ここでは、それぞれの基本を順番に確認していきます。
フィードバック制御とは?
フィードバック制御とは、出力結果を入力側へ戻し、目標値との差を確認しながら制御量を調整する制御方式です。
制御対象の出力が目標値より高ければ入力を減らし、低ければ入力を増やすように制御を続けるため、出力を目標値に近づけやすくなります。
このように、出力結果を利用して入力を繰り返し調整する仕組みをフィードバック制御といいます。
フィードバック制御と対になる「フィードフォワード制御」との違いも知っておくと、制御方式の使い分けを理解しやすくなります。
▶フィードバック制御とフィードフォワード制御の違いを解説
伝達関数とは何を表すものか
伝達関数とは、入力を与えたときに出力がどのように変わるかを式で表したものです。
入力を (X(s))、出力を (Y(s)) とすると、伝達関数は (G(s)=Y(s)/X(s)) の形で表します。
この式を見ることで、1つの入力信号に対して出力が何倍になるのか、どのくらい遅れて変化するのか、どのような動き方をするのかを確認できます。
フィードバック制御では、制御対象やフィードバック部分の働きを伝達関数で表すことで、入力から出力までの関係を式として扱えるようになります。
ブロック線図の基本的な見方
ブロック線図は、信号がどの方向へ流れ、各要素でどのような処理が行われるかを図で表したものです。
四角は伝達関数を表し、矢印は信号の流れる向きを示します。また、丸印は信号を加算または減算する場所を表し、入力信号とフィードバック信号を比較します。
入力から出力まで矢印の向きを順番に追うことで、信号がどの経路を通り、どの伝達関数を経由して出力になるかを確認できます。
ブロック線図の読み方に不安がある場合は、基本的なルールを図解で確認すると理解しやすくなります。
▶ブロック線図とは?見方・書き方をわかりやすく解説
フィードバック制御の伝達関数の求め方

フィードバック制御の伝達関数は、公式だけを暗記しても仕組みを理解しにくい部分があります。
閉ループ制御の構成を確認したうえで、伝達関数の式が導かれる流れや、分母に「1+G(s)H(s)」が現れる理由、ユニティフィードバックの場合の考え方を順番に見ていきましょう。
閉ループ制御の構成を確認する
閉ループ制御の伝達関数を求める前に、制御系の構成を確認します。
目標値を入力し、加算点でフィードバック信号との差を求め、その結果が制御対象へ入力されます。
制御対象の伝達関数を (G(s))、フィードバック部分の伝達関数を (H(s)) とし、出力が再び入力側へ戻る構成になっていることを確認すると、伝達関数を式に置き換えやすくなります。
閉ループ伝達関数の式
負帰還の閉ループ制御では、入力から出力までの伝達関数は (T(s)=\frac{G(s)}{1+G(s)H(s)}) で表します。
ここで、(G(s)) は制御対象の伝達関数、(H(s)) はフィードバック部分の伝達関数です。
制御対象だけではなく、フィードバック経路の影響も分母の (1+G(s)H(s)) に反映されるため、閉ループ全体の入力と出力の関係を1つの式で表せます。
なぜ分母に「1+G(s)H(s)」が入るのか
分母に「(1+G(s)H(s))」が入るのは、出力がフィードバック経路を通って入力へ戻り、その信号が再び制御対象へ入力されるためです。
負帰還では、入力信号からフィードバック信号を差し引いた値が制御対象へ入力されます。この関係を入力と出力の式で表し、出力について整理すると、フィードバック信号の影響が分母の「(1+G(s)H(s))」として現れます。
そのため、閉ループ全体の伝達関数は (T(s)=\frac{G(s)}{1+G(s)H(s)}) の形になります。
ユニティフィードバックの場合の考え方
ユニティフィードバックとは、フィードバック部分の伝達関数が (H(s)=1) の制御系です。
この場合は閉ループ伝達関数の式に (H(s)=1) を代入するため、伝達関数は (T(s)=\frac{G(s)}{1+G(s)}) になります。
フィードバック部分を1として計算できるため、式が簡単になり、閉ループ伝達関数を求めやすくなります。
開ループ伝達関数・閉ループ伝達関数・一巡伝達関数の違いと使い分け

開ループ伝達関数・閉ループ伝達関数・一巡伝達関数は、名前が似ているため混同されやすいものの、それぞれ役割や使う場面が異なります。
違いを整理すると、制御系を解析するときにどの伝達関数を使えばよいのか判断しやすくなります。
ここでは、それぞれの意味と使い分けを順番に確認していきましょう。
開ループ伝達関数とは
開ループ伝達関数とは、フィードバック経路を考えず、入力から制御対象までの信号の流れだけを表した伝達関数です。
制御対象を (G(s))、フィードバック部分を (H(s)) とする場合、開ループ伝達関数は通常 (G(s)) を指します。
出力を入力へ戻す影響を含まないため、制御対象そのものの入力と出力の関係を確認するときに用います。
閉ループ伝達関数とは
閉ループ伝達関数とは、フィードバック経路を含めた制御系全体の入力と出力の関係を表す伝達関数です。
負帰還の制御系では、制御対象を (G(s))、フィードバック部分を (H(s)) とすると、閉ループ伝達関数は (T(s)=\frac{G(s)}{1+G(s)H(s)}) で表します。
入力信号だけでなく、出力を入力へ戻す影響も含めた結果を表すため、制御系全体の動作を確認するときに用います。
一巡伝達関数とは
一巡伝達関数とは、信号がフィードバック経路を1周して元の位置へ戻るまでの伝達関数です。
制御対象を (G(s))、フィードバック部分を (H(s)) とすると、一巡伝達関数は (G(s)H(s)) で表します。
制御対象とフィードバック部分を掛け合わせた値になるため、フィードバック信号が1周する間にどのような影響を受けるかを確認するときに用います。
安定性との関係が気になる方は、一巡伝達関数を使った代表的な評価方法もあわせて確認してみてください。
▶制御系の安定判別とは?代表的な手法や考え方をわかりやすく解説
それぞれ何を確認するときに使うのか
開ループ伝達関数は、制御対象だけの入力と出力の関係を確認するときに使います。
閉ループ伝達関数は、フィードバックを含めた制御系全体の入力と出力の関係を確認するときに使います。一巡伝達関数は、信号がフィードバック経路を1周したときの影響を確認するときに使います。
確認したい対象が制御対象だけなのか、制御系全体なのか、フィードバック経路なのかによって使い分けます。
制御系ではどの伝達関数をよく使う?
制御系では、制御対象全体の動作を確認するために閉ループ伝達関数を使う場面が多くあります。
一方で、制御対象単体の特性を確認するときは開ループ伝達関数を用い、フィードバック経路の影響や安定性を検討するときは一巡伝達関数を用います。
確認したい内容に応じて伝達関数を使い分けることで、制御系の動作を適切に評価できます。
フィードバック制御で伝達関数を使う理由

フィードバック制御では、伝達関数を使うことで制御系の動作や性能を数式で整理しやすくなります。
特に、出力の安定性や目標値との誤差、外乱への強さを評価するときに重要な役割を果たします。
ここでは、伝達関数を使う主な理由を順番に見ていきましょう。
出力を安定させやすくなる
伝達関数を使うと、入力を変えたときに出力がどのように変化するかを式で確認できます。
フィードバック制御では、閉ループ伝達関数から入力と出力の関係を計算できるため、出力が目標値へ近づくか、振動しやすいかを事前に確認できます。
その結果、制御系の特性を把握しながら、出力を安定させやすくなります。
誤差を小さくしやすい
伝達関数を使うと、目標値と出力との差が制御系全体でどのように変化するかを式で確認できます。
閉ループ伝達関数を用いて制御対象やフィードバック部分の特性を調整すると、出力が目標値へ近づきやすくなり、目標値との差を小さくしやすくなります。
そのため、制御系の設計段階で誤差の大きさを検討しやすくなります。
外乱の影響を抑えやすい
伝達関数を使うと、外乱が加わったときに出力へどの程度影響するかを式で確認できます。
フィードバック制御では、出力が目標値からずれると、その差に応じて入力を調整します。
そのため、閉ループ伝達関数を用いて制御系を設計することで、外乱による出力の変化を小さくしやすくなります。
フィードバック制御の伝達関数を具体例で理解する

伝達関数は数式だけで学ぶとイメージしにくいため、実際の制御例に当てはめて考えると理解しやすくなります。
ここでは温度制御を例に、入力・出力・フィードバック信号がどのように流れるのかを確認しながら、ブロック線図と伝達関数の対応関係を順番に見ていきましょう。
温度制御を例に考える
温度制御では、設定温度を25℃にすると、温度センサーが現在の室温を測定し、設定温度との差を制御装置へ送ります。
制御装置はその差に応じてヒーターの出力を調整し、室温を25℃へ近づけます。
この一連の入力から出力までの関係を伝達関数で表すことで、温度がどのように変化するかを式として扱えるようになります。
入力・出力・フィードバック信号の流れ
温度制御では、設定温度が入力信号となり、制御装置を通してヒーターへ送られます。
ヒーターによって室温が変化し、その室温が出力信号になります。温度センサーは出力された室温を測定し、その値をフィードバック信号として制御装置へ戻します。
制御装置は設定温度と現在の室温を比較し、その差に応じてヒーターの出力を調整します。
ブロック線図と伝達関数を対応させる
温度制御のブロック線図では、制御装置やヒーターを伝達関数 (G(s))、温度センサーを伝達関数 (H(s)) として表します。
矢印は設定温度から室温までの信号の流れを示し、温度センサーで測定した室温はフィードバック信号として入力側へ戻ります。
このように、ブロック線図の各要素を伝達関数へ置き換えることで、制御系全体を式として表せます。
フィードバック制御の伝達関数でよくある疑問

フィードバック制御の伝達関数を学び始めると、記号の意味やブロック線図の読み方でつまずくことが少なくありません。
特に、G(s)とH(s)の役割や正帰還・負帰還の違いは混同しやすいポイントです。
ここでは、初学者がよく感じる疑問を一つずつ整理していきます。
G(s)とH(s)の違いが分からない
(G(s)) は制御対象の伝達関数、(H(s)) はフィードバック部分の伝達関数を表します。
(G(s)) は入力を受けて出力を作る部分の特性を表し、(H(s)) は出力を測定して入力側へ戻す経路の特性を表します。
ブロック線図では前向き経路が (G(s))、戻り経路が (H(s)) と表されるため、それぞれがどの経路を表しているかを確認すると違いを区別しやすくなります。
正帰還と負帰還は何が違う?
負帰還は、出力を入力から差し引いて制御する方式です。
出力が目標値より大きくなると入力を減らし、小さくなると入力を増やすため、目標値との差を小さくしやすくなります。一方、正帰還は、出力を入力へ加えて制御する方式です。
出力が大きくなるほど入力も増えるため、出力がさらに大きくなりやすく、制御系が不安定になる場合があります。
ブロック線図を見ると混乱する場合は?
ブロック線図が分かりにくい場合は、入力から出力まで矢印の向きを順番に追って確認します。
次に、四角は伝達関数、丸印は信号を加算または減算する場所、矢印は信号の流れる方向と役割を分けて確認すると整理しやすくなります。
最後に、前向き経路を (G(s))、戻り経路を (H(s)) と対応させると、ブロック線図と伝達関数の関係を理解しやすくなります。
まとめ
フィードバック制御の伝達関数は、入力と出力の関係を数式で表し、制御系全体の動きを整理するために用いられます。
閉ループ伝達関数はフィードバックを含めた制御系全体、開ループ伝達関数は制御対象、一巡伝達関数はフィードバック経路を1周した影響を表すため、目的に応じて使い分けることが大切です。
また、ブロック線図と伝達関数を対応させて考えることで、式の意味や信号の流れを理解しやすくなります。
まずはフィードバック制御の基本構成を押さえ、閉ループ伝達関数の考え方から順番に理解していきましょう。