目次
はじめに
「介護現場では、どのような事故が起こりやすいの?」
「転倒や誤嚥、服薬ミスは、なぜ発生してしまうの?」
「事故が起きたあと、再発を防ぐためには何を確認すればよいの?」
このように、介護のリスクマネジメントについて調べていると、「事故を防ぐには何から見直せばよいのだろう」「職員の注意だけで本当に防げるのだろうか」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、介護現場で起こりやすいリスクマネジメントの事例をもとに、事故が起きる原因や再発防止策を順を追って分かりやすく解説していきます。
介護におけるリスクマネジメントとは?

介護現場では、高齢者の身体状況や認知機能、生活環境などが一人ひとり異なるため、転倒や誤薬、誤嚥といったさまざまな事故が起こる可能性があります。
ここでは、介護現場でリスクマネジメントが重要とされる理由や、介護事故とヒヤリハットの違い、現場で起こりやすいリスクの種類について解説します。
介護現場でリスクマネジメントが重要な理由
介護現場でリスクマネジメントが重要な理由は、転倒や誤薬、誤嚥、移乗時のけがなどの事故が、日々の介助の中で起こる可能性があるためです。
介護を受ける方は、歩行が不安定だったり、薬の種類が多かったり、食事中にむせやすかったりと、一人ひとり注意すべきポイントが異なります。
そのため、職員が「いつ」「どこで」「どのような事故が起こりやすいか」を事前に確認しておくことが大切です。
リスクマネジメントを行うことで、事故が起きてから対応するのではなく、声かけや服薬確認、食事中の姿勢確認などを通して、事故につながる行動をあらかじめ防ぎやすくなります。
その結果、利用者の安全を守りながら、職員も安心して介助を行いやすくなり、介護現場全体で事故を防ぐ取り組みにつながります。
介護事故とヒヤリハットの違い
介護事故とヒヤリハットの違いは、利用者にけがや体調変化などの結果が出たかどうかです。
介護事故は、転倒してけがをした、薬を飲み間違えた、食事中にむせて処置が必要になったなど、利用者に実際の影響が出た状態を指します。
一方、ヒヤリハットは、転びそうになったが支えられた、薬を渡す前に間違いに気づいたなど、事故には至らなかったものの、少しの違いで事故につながっていた可能性がある場面のことです。
つまり、介護事故は「起きてしまった出来事」、ヒヤリハットは「事故につながる可能性があった出来事」と考えると分かりやすいでしょう。
『ヒヤリハットをどのように記録し、現場で共有すればよいのか具体的に知りたい方は、報告書の書き方や記載例を確認しておくとイメージしやすくなります。』
▶ヒヤリハット報告書とは?書き方や記載例をわかりやすく解説
介護現場で起こりやすいリスクの種類
介護現場で起こりやすいリスクには、転倒・転落、誤薬、誤嚥、移乗時のけが、入浴中の体調変化などがあります。
転倒や転落は、ベッドから立ち上がるときやトイレへ移動するとき、車いすへの乗り移りなど、姿勢を変える場面で起こりやすいリスクです。
また、誤薬は名前の確認不足や薬の取り違え、誤嚥は食事中の姿勢の崩れや飲み込みの状態によって起こることがあります。
入浴中は、温度差による体調変化や立ち上がったときのふらつきによって、転倒につながる場合もあります。
このように、リスクが起こりやすい場面や原因はそれぞれ異なります。日頃から「どの場面で」「どのような危険が起こりやすいか」を確認しておくことで、事故を未然に防ぎやすくなるでしょう。
介護現場で多いリスクマネジメント事例

介護現場で起こる事故は、食堂、居室、浴室、トイレ、送迎車内など、利用者が毎日使う場所で発生しやすいです。
ここでは、介護現場で多いリスクマネジメント事例をもとに、どのような場面で事故が起こりやすいのかを具体的に見ていきます。
転倒・転落事故の事例
転倒・転落事故の事例として多いのは、利用者がベッドから立ち上がるときや、車いすへ移るときにバランスを崩して転んでしまうケースです。
たとえば、夜間にトイレへ行こうとして一人で起き上がり、立ち上がった瞬間にふらついて転倒することがあります。また、車いすのブレーキがかかっていないまま移乗しようとして、車いすが動き、尻もちをついてしまうケースも見られます。
このような事故は、立ち上がる前や方向転換をするとき、座る直前など、体の重心が大きく動く場面で起こりやすい傾向があります。
そのため、介助前に足元の状態や車いすのブレーキ、手すりの位置、利用者のふらつきなどを確認しておくことが大切です。小さな確認を積み重ねることで、転倒・転落事故の予防につながります。
誤薬事故の事例
誤薬事故の事例として多いのは、利用者の名前や服薬時間、薬の種類を十分に確認しないまま、本来とは違う薬を渡してしまうケースです。
たとえば、朝と夕の薬を取り違えたり、別の利用者の薬を渡してしまったりすると、体調に影響が出るおそれがあります。また、薬を準備したあとに別の作業を挟み、誰の薬か分からなくなってしまうこともあります。
誤薬事故は、薬を準備するとき、利用者へ渡すとき、服薬後を確認するときなど、確認が不十分な場面で起こりやすい傾向があります。
そのため、服薬前には名前や服薬時間、薬の内容をしっかり確認し、服薬後も薬が残っていないかを確認することが大切です。毎回の確認を丁寧に行うことが、誤薬事故の予防につながります。
誤嚥・窒息事故の事例
誤嚥・窒息事故の事例として多いのは、食事中に食べ物や飲み物が気管に入り、むせ込みや呼吸のしづらさが起こるケースです。
たとえば、姿勢が崩れたまま食事を続けたり、一口の量が多かったりすると、うまく飲み込めず、誤嚥や窒息につながることがあります。
このような事故は、食事前の姿勢確認や、一口ごとの飲み込みの確認が十分でない場合に起こりやすい傾向があります。
そのため、食事介助では背中をしっかり起こし、飲み込んだことを確認してから次の一口をすすめることが大切です。利用者の様子をゆっくり確認しながら介助することが、事故の予防につながります。
『食事中の事故を防ぐためには、誤嚥が起こる仕組みや注意すべきサインを理解しておくことも重要です。原因や予防方法を詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。』
▶誤嚥とは?原因や症状、予防方法をわかりやすく解説
離設・徘徊事故の事例
離設・徘徊事故の事例として多いのは、利用者が職員に声をかけずに居室やフロアを出て、施設の玄関や駐車場などへ移動してしまうケースです。
たとえば、トイレや自宅へ帰ろうとして一人で歩き出し、職員が別の介助をしている間にエレベーターや出入口へ向かってしまうことがあります。
また、夕方や食後など、落ち着かなくなりやすい時間帯は特に注意が必要です。利用者の行動の変化や歩き出しやすい時間、向かいやすい場所を把握できていないと、発見が遅れてしまうこともあります。
そのため、普段から「いつ歩き出しやすいか」「どこへ向かいやすいか」「どのような声かけで落ち着きやすいか」を職員同士で共有しておくことが大切です。見守りの方法をそろえておくことで、事故の予防につながります。
送迎中の事故の事例
送迎中の事故の事例として多いのは、利用者が車に乗り降りするときにバランスを崩し、車両の段差や玄関前で転倒してしまうケースです。
たとえば、送迎車から降りる際に足元が不安定だったり、急いで体を動かしたりすると、ふらついて転倒することがあります。また、車いすのブレーキや固定ベルトの確認が不十分な場合は、車の発進や停止時に姿勢が崩れてしまうこともあります。
送迎中の事故は、乗車前や降車時、車内での安全確認が十分でないと起こりやすい傾向があります。
そのため、利用者の足元や手すりの位置、車いすのブレーキ、固定ベルトなどを一つひとつ確認しておくことが大切です。出発前と降車前に安全を確認する習慣をつけることで、事故の予防につながります。
事例から見る事故が起こる原因

介護現場の事故は、利用者の動きだけが原因で起こるわけではありません。
事故の背景には、確認の抜け、思い込み、職員の業務量の多さ、利用者ごとの状態把握不足が重なっていることが多いため、事例を通して原因を具体的に見ていくことが大切です。
情報共有不足によるミス
情報共有不足によるミスは、利用者の状態や介助方法、注意点が職員の間で十分に共有されていないときに起こります。
たとえば、前日の夜勤で「立ち上がるときにふらつきが強い」と分かっていても、その情報が日勤の職員に伝わっていなければ、いつもどおりの介助を行い、転倒につながる可能性があります。
また、食事の介助方法やトイレ誘導のタイミングなどが記録や申し送りに残っていないと、担当する職員によって対応が変わってしまうこともあります。
その結果、必要な確認が抜けたり、利用者に合わない介助になったりして、事故につながるおそれがあります。
事故を防ぐためには、申し送りや介護記録を活用し、利用者の変化や注意点を職員全員で共有しておくことが大切です。同じ情報を確認しながら介助を行うことで、安心して支援しやすくなります。
確認不足や思い込みによる事故
確認不足や思い込みによる事故は、「いつもと同じだから大丈夫」と考え、介助前の確認を省いてしまったときに起こります。
たとえば、車いすのブレーキがかかっていると思い込んで移乗を始めると、利用者が体重をかけた瞬間に車いすが動き、転倒につながることがあります。また、薬の名前や服薬時間を十分に確認しないまま渡してしまい、誤薬が起きるケースもあります。
このような確認不足は、慣れている作業ほど起こりやすく、転倒や誤薬、誤嚥などさまざまな事故につながる可能性があります。
そのため、介助を始める前には、利用者の状態や必要な物品、注意点を一つひとつ確認することが大切です。「いつもと同じ」と決めつけず、そのときの状況に合わせて丁寧に対応することが、事故の予防につながります。
人手不足・業務負担によるリスク
人手不足や業務負担によるリスクは、職員1人が複数の利用者を同時に対応することで、見守りや確認に十分な時間を取れなくなったときに起こります。
たとえば、食事介助やトイレ誘導、ナースコール対応、服薬確認が重なると、一つひとつの確認が慌ただしくなり、利用者の小さな変化を見落としてしまうことがあります。
また、急いで次の介助へ移ろうとすると、車いすのブレーキ確認や服薬後の確認など、本来必要な確認が抜けてしまう場合もあります。
その結果、ふらつきやむせ込み、行動の変化に気づくのが遅れ、転倒や誤薬、誤嚥、離設などの事故につながるおそれがあります。
そのため、忙しい時間帯ほど、職員同士で役割分担や優先順位を共有しておくことが大切です。誰がどの利用者を見守るのかをあらかじめ確認しておくことで、安心して介助を行いやすくなります。
利用者ごとの個別対応不足
利用者ごとの個別対応不足は、歩く力や飲み込む力、理解しやすい声かけなどを十分に確認しないまま、全員に同じ介助を行ったときに起こります。
たとえば、足に力が入りにくい利用者に普段と同じ方法で移乗介助をすると、ふらつきや転倒につながることがあります。また、飲み込みに時間がかかる利用者に急いで食事介助を行うと、むせ込みや誤嚥が起こりやすくなります。
このように、一人ひとりに必要な見守りや声かけ、介助の方法が合っていないと、事故の予防や早めの対応が難しくなることがあります。
そのため、介助前には利用者の身体状態や生活リズム、注意点を確認し、その人に合った方法で対応することが大切です。一人ひとりの状態に合わせた介助を心がけることで、安心して過ごせる環境づくりにつながります。
介護現場で実践されている再発防止策

介護現場で事故を防ぐには、同じミスを繰り返さないために、起きた出来事をその場限りで終わらせないことが大切です。
再発防止策では、報告書の共有、マニュアルの見直し、声掛けやダブルチェック、利用者ごとのリスク把握を組み合わせ、現場で同じ事故を起こさない仕組みを整えることが重要です。
ヒヤリハット報告を活用する
ヒヤリハット報告を活用するには、事故にはならなかった場面でも、「いつ」「どこで」「何が起きそうだったか」を記録しておくことが大切です。
たとえば、立ち上がった直後にふらついた、薬を渡す前に間違いに気づいた、食事中にむせ込みが強くなったなどの出来事を残しておくことで、事故につながる可能性があった場面を職員全員で共有できます。
ヒヤリハットを記録しないままにすると、同じような危険が繰り返されても原因に気づきにくく、事故の予防が遅れてしまうことがあります。
そのため、ヒヤリハット報告は誰かを責めるためのものではなく、事故を未然に防ぐための大切な取り組みとして活用することが大切です。日頃から小さな気づきを共有することで、より安心して介助できる環境づくりにつながります。
事故報告書を共有して再発防止につなげる
事故報告書を共有して再発防止につなげるには、事故が起きた日時や場所、事故前の状況、利用者の状態などを記録し、職員全員が内容を確認できるようにすることが大切です。
事故報告書が担当者だけで止まってしまうと、ほかの職員は事故が起きた場面や注意すべき点を知らないまま、同じ介助を続けてしまうことがあります。
また、事故の結果だけではなく、どのような声かけをしたのか、どの位置で見守っていたのかなど、事故に至るまでの流れを共有することで、見直すべき手順が分かりやすくなります。
共有した内容をもとに、見守り方法や確認項目、職員同士の連携を見直していくことで、同じ事故を繰り返しにくくなります。
そのため、事故報告書は書いて終わりではなく、次の介助をより安全に行うための資料として活用することが大切です。日頃から情報を共有し合うことで、安心して介助できる環境づくりにつながります。
『事故報告書を作成する際に、「何を書けばよいのか分からない」と感じる場合は、基本的な書き方や記載例を確認しておくと整理しやすくなります。』
▶介護事故報告書の書き方とは?記載例や作成時のポイントを解説
マニュアルとルールを定期的に見直す
マニュアルとルールを定期的に見直すには、事故報告書やヒヤリハット報告を確認し、今の介助手順で安全に対応できているかを振り返ることが大切です。
マニュアルが古いままだと、利用者の身体状態や生活状況が変わっていても、以前と同じ方法で介助を続けてしまうことがあります。また、ルールが複雑すぎると、職員によって確認する内容や対応方法に違いが出てしまう場合もあります。
そのため、転倒や誤薬、誤嚥、離設などが起きた場面をもとに、確認項目や記録方法、情報共有のタイミングを定期的に見直すことが必要です。
マニュアルやルールを現場の状況に合わせて更新していくことで、職員が同じ手順で対応しやすくなります。その積み重ねが、事故の予防や安心して介助できる環境づくりにつながるでしょう。
職員同士で声掛け・ダブルチェックを行う
職員同士で声掛けやダブルチェックを行うには、介助前や確認が必要な場面で、1人だけで判断せず、別の職員にも確認してもらうことが大切です。
たとえば、移乗前に車いすのブレーキを確認したり、服薬前に利用者の名前と薬を一緒に確認したりすると、確認した内容を職員同士で共有しやすくなります。
1人で急いで対応していると、ブレーキの確認や薬の取り違え、利用者の小さな変化を見落としてしまうこともあります。
そのため、声掛けやダブルチェックを取り入れることで、確認漏れや思い込みに気づきやすくなります。
職員同士で確認し合う習慣を続けることで、同じ事故を繰り返しにくくなり、より安心して介助できる環境づくりにつながるでしょう。
利用者ごとのリスクを事前に把握する
利用者ごとのリスクを事前に把握するには、介助に入る前に、歩行状態や立ち上がり時のふらつき、飲み込みの状態、服薬内容などを確認しておくことが大切です。
同じ介助内容でも、転びやすい動作やむせやすい食事形態、注意が必要な時間帯は利用者によって異なります。そのため、一人ひとりの特徴を理解したうえで対応することが重要になります。
事前の確認が十分でないと、見守りの方法や声かけのタイミングが合わず、転倒や誤嚥、誤薬、離設などの事故につながるおそれがあります。
そのため、介助前には介護記録や申し送り、過去のヒヤリハットの内容を確認し、注意点を職員同士で共有しておくことが大切です。利用者に合った介助を心がけることが、安心して過ごせる環境づくりにつながるでしょう。
介護事故が発生したときの基本対応

介護事故が発生した場合は、慌てて原因を追及するのではなく、決められた手順に沿って冷静に対応することが大切です。
ここでは、介護事故が起きた際の基本的な対応の流れについて解説します。
利用者の安全確認を最優先に行う
介護事故が発生したときは、まず利用者の意識や呼吸、出血の有無、痛みの訴えなどを確認し、安全を確保することが最優先です。
転倒や転落の直後に慌てて立たせてしまうと、骨折や頭部のけがを見逃してしまうおそれがあります。また、誤嚥や窒息が疑われる場合は、むせ込みや呼吸の状態、顔色などを確認し、必要に応じてすぐに応援を呼ぶことが大切です。
利用者の状態を十分に確認しないまま対応を進めると、けがや体調の変化に気づくのが遅れてしまうことがあります。
そのため、事故直後は周囲の片付けや報告を急ぐのではなく、まず利用者の様子を落ち着いて確認することが大切です。安全をしっかり確かめてから次の対応へ進むことで、安心して適切な支援につなげやすくなるでしょう。
状況を記録して速やかに共有する
事故が発生したあとは、起きた時間や場所、利用者の様子、事故後の状態などをできるだけ早く記録し、職員同士で共有することが大切です。
記録が遅れると、事故が起きたときの状況や職員の対応があいまいになり、原因を正しく確認しにくくなることがあります。
また、記録した内容が担当者だけで止まってしまうと、次の勤務の職員が利用者の状態や注意点を知らないまま介助を行ってしまう場合もあります。
その結果、同じ場面で確認漏れが起こり、再び事故につながるおそれがあります。
そのため、事故後は利用者の安全を確認したうえで、発生時の状況や対応内容を記録し、申し送りなどを通して職員全員で共有しておくことが大切です。情報をしっかり共有することが、再発防止につながります。
家族・関係者へ適切に報告する
家族や関係者へ適切に報告するには、事故が起きた時間や場所、利用者の状態、職員が行った対応を分かりやすく伝えることが大切です。
報告が遅れたり内容があいまいだったりすると、家族は利用者の状態や今後の対応を把握しにくくなってしまいます。また、推測や言い訳を先に伝えると、実際に何が起きたのかが分かりにくくなることもあります。
そのため、報告するときは、確認できている事実を中心に、痛みや出血の有無、意識や呼吸の状態、受診の必要性などを落ち着いて伝えることが重要です。
家族や関係者に正確な情報を共有することで、事故後の対応方針をそろえやすくなります。利用者を安心して支えるためにも、丁寧で分かりやすい報告を心がけることが大切です。
再発防止に向けて原因を振り返る
再発防止に向けて原因を振り返るには、事故が起きたあとに「どの場面で」「どの確認が不足していたか」を職員同士で確認することが大切です。
事故直後の対応だけで終わってしまうと、同じ利用者や同じ時間帯、同じ介助場面で再び事故が起こる可能性があります。
たとえば、転倒であれば声かけや足元の確認、車いすのブレーキなどを見直します。また、誤薬や誤嚥であれば、名前の確認や食事姿勢、飲み込みの確認が十分だったかを振り返ります。
原因を振り返ることで、次回から気をつけるポイントや介助の手順が明確になります。職員同士で改善点を共有しながら少しずつ見直していくことが、同じ事故を繰り返さないための大切な取り組みにつながるでしょう。
介護現場で事故を防ぐために重要な考え方

介護現場で事故を防ぐためには、マニュアルを整備するだけではなく、職員一人ひとりがリスクを意識し、組織全体で安全を守る考え方を共有することが重要です。
ここでは、介護現場で事故を防ぐために重要な考え方について解説します。
事故を責めるのではなく共有する環境を作る
事故を責めるのではなく共有する環境を作るには、事故やヒヤリハットが起きたときに、担当した職員だけを責めるのではなく、「何が起きたのか」を職員全員で確認することが大切です。
職員が責められることを心配すると、小さなミスや危険な場面を報告しにくくなってしまいます。すると、同じような危険が繰り返されていても、現場全体で気づくのが遅れてしまうことがあります。
その結果、見守りの方法や声かけ、確認する項目を見直す機会が少なくなり、事故につながるおそれもあります。
そのため、事故やヒヤリハットは個人の失敗として捉えるのではなく、みんなで安全な介助につなげるための大切な情報として共有することが重要です。気づいたことを安心して話し合える環境をつくることが、事故の予防につながるでしょう。
小さな異変やヒヤリハットを見逃さない
小さな異変やヒヤリハットを見逃さないためには、利用者の歩き方や表情、食事中の様子などを、普段と比べながら確認することが大切です。
たとえば、いつもより足が上がっていない、食事中に何度もむせ込む、落ち着かない様子が続くといった変化は、事故の前触れになっていることがあります。
こうした小さな異変を見過ごしてしまうと、転倒や誤嚥、離設などの事故につながるおそれがあります。また、ヒヤリハットを共有しないままにすると、同じような危険が繰り返されても対策を取りにくくなってしまいます。
そのため、事故にはならなかった場面でも記録を残し、職員同士で共有しておくことが大切です。日頃から小さな変化に気づき、みんなで情報を共有することが、事故の予防につながるでしょう。
職員同士で情報を共有して予測につなげる
職員同士で情報を共有して予測につなげるには、利用者の体調や歩行状態、食事中の様子、気になる変化などを、申し送りや記録を通して同じ内容で確認することが大切です。
情報共有が十分でないと、前の勤務で見られたふらつきやむせ込み、落ち着かない様子に気づかないまま介助を行ってしまうことがあります。
その結果、「この時間は立ち上がりやすい」「食事中にむせやすい」といった利用者ごとの傾向を予測しにくくなり、事故につながるおそれもあります。
職員同士で情報を共有しておくことで、見守りの方法や声かけのタイミング、確認するポイントをあらかじめ決めやすくなります。
そのため、利用者の小さな変化も一人で抱え込まず、職員みんなで共有することが大切です。日頃から情報をつなげていくことが、事故の予防や安心できる介護につながるでしょう。
利用者の安全と職員負担のバランスを考える
利用者の安全と職員負担のバランスを考えるには、事故を防ぐための確認を大切にしながら、職員が無理なく続けられる手順を整えることが重要です。
確認項目が多すぎると、食事介助や移乗介助、服薬確認などが重なる時間帯に、一つひとつを丁寧に行うことが難しくなる場合があります。その結果、足元や姿勢、利用者の小さな変化を見落としてしまうこともあります。
一方で、負担を減らそうとして必要な確認を省いてしまうと、転倒や誤薬、誤嚥などの事故につながるおそれがあります。
そのため、現場では必ず確認する項目を決め、職員同士で役割を分担しながら、無理なく続けられる方法を考えていくことが大切です。利用者の安全と職員の働きやすさの両方を大切にすることが、安心できる介護につながるでしょう。
まとめ
介護のリスクマネジメントで大切なのは、事故が起きてから対応するのではなく、「事故が起こりそうな場面」に早めに気づき、事前に対策することです。
転倒や誤薬、誤嚥、離設などの事故は、利用者の状態だけが原因ではありません。
情報共有の不足や確認漏れ、忙しさによる焦りなど、さまざまな要因が重なって起こることがあります。
そのため、日頃から利用者一人ひとりの特徴や注意点を把握し、ヒヤリハットや小さな異変を職員同士で共有していくことが大切です。
事故やミスを個人の責任として終わらせるのではなく、現場全体で学び、次の介助に活かしていく姿勢が事故の予防につながります。
すべてを完璧に防ぐことは難しくても、小さな気づきを積み重ねることで、事故のリスクを減らしていくことはできます。
利用者が安心して過ごせること、そして職員が安心して介助できることを目指しながら、無理なく続けられるリスクマネジメントを取り入れていきましょう。