目次
はじめに
「ペースメーカーの異常波形はどのように見分ければいいの?」
「キャプチャ不全やセンシング不全は何が違うの?」と疑問に感じていませんか。
心電図の勉強を始めた方や、実際の臨床でペースメーカー心電図を確認する機会が増えた方の中には、スパイクは見えているのに正常なのか異常なのか判断できず、教科書や資料を見比べても違いが整理できずに手が止まってしまうこともあるでしょう。
この記事では、キャプチャ不全やセンシング不全をはじめとする代表的な異常波形の特徴や見分け方、心電図で確認したいポイントについて順を追って説明していきます。
ペースメーカーの正常波形と異常波形の違いは?

正常波形と異常波形を見分けるには、まず正常なペースメーカー波形の特徴を理解したうえで、異常が疑われる場合にどのような点を確認すべきかを押さえることが重要です。
ここでは、正常なペースメーカー波形の基本と、異常波形で確認すべきポイントについて順番に解説します。
正常なペースメーカー波形の基本
正常なペースメーカー波形では、まずペーシングスパイクが確認でき、その直後に心房または心室が興奮してP波やQRS波が現れます。
心房ペーシングではスパイクの後にP波、心室ペーシングではスパイクの後に幅の広いQRS波が続くのが基本です。
また、設定されたレートに合わせて規則的にペーシングが行われていることも、正常波形を判断するポイントです。
異常波形で確認すべきポイント
異常波形が疑われる場合は、まずペーシングスパイクが出ているか、その後にP波やQRS波が続いているかを確認します。
あわせて、スパイクが適切なタイミングで出現しているか、不必要なスパイクがないかも確認することが大切です。
正常波形と見比べながら確認すると、キャプチャ不全やセンシング不全などの異常に気づきやすくなります。
キャプチャ不全とは?
キャプチャ不全は、ペースメーカーの代表的な異常の一つであり、心電図では特徴的な波形として現れます。
ここでは、キャプチャ不全の波形の特徴と、キャプチャ不全が起こる主な原因について順番に解説します。
キャプチャ不全の波形の特徴
キャプチャ不全では、ペーシングスパイクは確認できるものの、その直後に本来現れるはずのP波やQRS波が出現しません。
これは、ペースメーカーは刺激を出力していても、心筋が刺激に反応していない状態です。
心電図では「スパイクはあるが、その後に波形が続かない」ことが特徴で、正常波形との違いを確認すると見分けやすくなります。
キャプチャ不全が起こる主な原因
キャプチャ不全は、ペースメーカーの刺激が心筋へ十分に伝わらないことで起こります。
主な原因には、リードの位置ずれや断線、刺激出力の不足、電池消耗による出力低下などがあります。
また、高カリウム血症などで心筋の反応性が低下すると、正常に刺激を出力していてもキャプチャ不全が起こることがあります。
センシング不全とは?
センシング不全は、ペースメーカーが心臓の電気活動を正しく感知できない状態であり、アンダーセンシングとオーバーセンシングの2種類に分けられます。
ここでは、アンダーセンシングとオーバーセンシングの特徴、センシング不全が起こる主な原因について順番に解説します。
アンダーセンシングの特徴
アンダーセンシングは、ペースメーカーが患者自身のP波やQRS波を十分に感知できない状態です。
そのため、本来はペーシングが不要な場面でもスパイクが出現します。
心電図では、自己心拍とは関係のないタイミングでスパイクが現れることが特徴です。
オーバーセンシングの特徴
オーバーセンシングは、心臓以外の電気信号や不要な信号を自己心拍と誤って感知する状態です。
その結果、本来ペーシングが必要な場面でもスパイクが出力されません。
心電図では、必要なタイミングでスパイクが見られないことが特徴です。
センシング不全が起こる主な原因
センシング不全は、リードの位置ずれや断線、接触不良などにより、心臓の電気信号を正しく検出できないことで起こります。
また、センシング感度の設定が適切でない場合も、アンダーセンシングやオーバーセンシングが生じる原因になります。
キャプチャ不全とセンシング不全の見分け方
キャプチャ不全とセンシング不全はどちらも代表的なペースメーカー異常ですが、心電図で現れる波形や確認すべきポイントは異なります。
ここでは、波形で見分けるポイントと、正常波形と異常波形を比較した違いについて順番に解説します。
波形で見分けるポイント
キャプチャ不全とセンシング不全を見分けるときは、まずペーシングスパイクの有無と、その後にP波やQRS波が続いているかを確認します。
スパイクが出ているのにP波やQRS波が現れない場合はキャプチャ不全が疑われます。
一方、不要なスパイクが出現したり、必要なスパイクが出現しなかったりする場合は、センシング不全を考えます。
正常波形と異常波形を比較して違いを整理する
正常波形では、ペーシングスパイクの直後にP波やQRS波が現れ、必要なタイミングでペーシングが行われます。
異常波形では、この流れやタイミングに乱れがみられるため、正常波形と見比べながら確認すると違いを整理しやすくなります。
波形の特徴を一つずつ確認することで、異常の種類も判断しやすくなります。
ペースメーカーの異常波形を見つけたときの対応
ペースメーカーの異常波形を認めた場合は、波形だけで異常と判断するのではなく、患者の状態や機器の状況をあわせて確認し、適切な手順で対応することが重要です。
ここでは、最初に確認したいポイントと、医療現場での報告・対応の流れについて順番に解説します。
最初に確認したいポイント
ペースメーカーの異常波形を見つけた場合は、まず患者の意識や脈拍、血圧などを確認し、状態が安定しているかを把握します。
そのうえで、ペーシングスパイクの有無や、スパイクの後にP波やQRS波が続いているかを確認しましょう。
あわせて、ペーシング間隔や設定内容に変化がないかも確認すると、原因を整理しやすくなります。
医療現場での報告・対応の流れ
異常波形を確認した場合は、波形の特徴と患者の状態を整理して、担当医師や循環器担当者へ速やかに報告します。
報告時は、異常を確認した時間や心電図の所見、脈拍や血圧などの患者情報をあわせて伝えることが大切です。
その後は医師の指示に従い、設定確認や機器評価など必要な対応を進めます。
まとめ
ペースメーカーの異常波形を見分けるためには、まず正常波形を理解し、ペーシングスパイクとP波・QRS波の関係を確認することが大切です。
正常な波形との違いを意識しながら見ることで、キャプチャ不全やセンシング不全の特徴も整理しやすくなります。
また、異常波形を確認した場合は、心電図だけで判断するのではなく、患者の意識や脈拍、血圧などの全身状態もあわせて確認することが重要です。
波形の特徴と患者の状態を整理して報告することで、適切な対応につなげやすくなります。
最初は波形の違いが分かりにくく感じるかもしれませんが、正常波形を基準に一つずつ確認する習慣をつけることで、異常の特徴も少しずつ見分けられるようになります。
この記事を参考に、それぞれの波形の特徴と確認するポイントを整理し、日々の学習や臨床での波形判読に役立ててください。