目次
はじめに
「ペースメーカーのペーシング不全には、どんな種類があるの?」
「心電図を見ても、どこに異常があるのか判断できない」と迷っていませんか。
ペースメーカーを装着している人の心電図を確認したとき、ペーシングスパイクが見えなかったり、スパイクのあとに心臓の興奮が続かなかったりすると、何が起きているのか分からず戸惑うことがありますよね。
この記事では、ペースメーカーで起こる代表的なトラブルの種類と、それぞれを心電図から見分ける際のポイントをわかりやすく解説します。
ペーシング不全とは?
ペーシング不全を理解するには、まずペースメーカーが心臓に適切な電気刺激を送り、その刺激によって心筋が反応する仕組みを押さえることが大切です。
ここでは、ペーシング不全の意味、主な原因、センシング異常との違いを順に説明します。
ペーシング不全とは
ペーシング不全とは、ペースメーカーから必要な電気刺激が出ない、または刺激が出ても心筋がうまく反応しない状態です。
心電図では、本来見られるはずのペーシングスパイクが出ていなかったり、スパイクの後にP波やQRS波が続かなかったりします。
正常にペーシングできなくなると、設定した心拍数を保てないことがあります。
ペーシング不全が起こる主な原因
ペーシング不全は、ペースメーカー本体の電池消耗や機器の異常、リードの断線・位置ずれ、刺激閾値の上昇などによって起こります。
電気刺激が出なければペーシングスパイクが見られず、刺激が出ていても心筋が反応しなければ、その後にP波やQRS波が続きません。
原因を確認するときは、心電図でスパイクの有無と、その後に心筋の反応が見られるかを確認します。
ペーシング不全とセンシング異常の違い
ペーシング不全は、必要な電気刺激が出ない、または刺激が出ても心筋が反応しない状態です。
一方、センシング異常は、ペースメーカーが心臓の自発的な電気活動を正しく感知できない状態を指します。
心電図では、スパイクが適切に出ているか、スパイク後にP波やQRS波が続いているか、自発波に対して適切なタイミングで作動しているかを確認すると、違いを整理しやすくなります。
ペースメーカーのトラブル(ペーシング不全)の種類と見分け方
ペースメーカーのトラブルは、電気刺激が出ていない、刺激が心筋を興奮させていない、心臓の電気活動を正しく感知できていないなど、異常が起きる部分によって分けられます。
ここでは、Failure to Pace、Failure to Capture、Failure to Senseの特徴に加え、オーバーセンシングとアンダーセンシングの違いを順に説明します。
Failure to Pace(ペーシング不全)の特徴と見分け方
Failure to Paceは、ペースメーカーによる電気刺激が、必要なタイミングで出ない状態です。
心電図では、本来ペーシングされるはずのタイミングにペーシングスパイクが見られず、設定された下限レートより心拍数が低くなることがあります。
見分けるときは、心拍数を確認しながら、必要なタイミングでペーシングスパイクが出ているかを確認します。
Failure to Capture(捕捉不全)の特徴と見分け方
Failure to Captureは、ペーシングスパイクが出ているものの、電気刺激に心筋が反応しない状態です。
心電図ではスパイクを確認できますが、心房ペーシングでは直後にP波、心室ペーシングでは直後にQRS波が続きません。
見分けるときは、スパイクの有無だけでなく、その後に対応するP波やQRS波が出ているかを確認します。
Failure to Sense(センシング不全)の特徴と見分け方
Failure to Senseは、ペースメーカーが心臓の自発的な電気活動を正しく感知できない状態です。
心電図では、自発的なP波やQRS波があるのにペーシングスパイクが出るなど、刺激のタイミングに異常が見られます。
見分けるときは、自発波とペーシングスパイクの位置関係に注目し、適切なタイミングで作動しているかを確認します。
オーバーセンシング・アンダーセンシングとの違い
オーバーセンシングは、本来感知する必要のない電気信号まで自発波として感知し、必要なペーシングが抑えられてしまう状態です。
一方、アンダーセンシングは、本来感知すべきP波やQRS波を感知できず、不適切なタイミングでペーシングスパイクが出る状態です。
心電図では、必要なスパイクが出ていなければオーバーセンシング、自発波があるのにスパイクが出ていればアンダーセンシングを疑います。
ペーシング不全を見分けるポイント
ペーシング不全を見分けるには、心電図上でペーシングスパイクが適切なタイミングで出ているか、スパイクの後に心筋の興奮が続いているかを確認することが重要です。
ここでは、心電図で確認するポイントから、ペーシング不全とセンシング異常の比較、試験や臨床で混同しやすいポイントまで順に説明します。
心電図で確認するポイント
心電図では、まずペーシングスパイクが必要なタイミングで出ているかを確認します。
次に、心房ペーシングではスパイクの直後にP波、心室ペーシングではQRS波が続いているかを見ていきます。
必要なタイミングでスパイクがなければFailure to Pace、スパイクがあっても対応するP波やQRS波がなければFailure to Captureを疑います。
ペーシング不全とセンシング異常を見分ける比較ポイント
ペーシング不全では、電気刺激が出ているか、その刺激に心筋が反応しているかを確認します。
一方、センシング異常では、自発的なP波やQRS波をペースメーカーが正しく感知できているかを確認します。
スパイクの有無とその後の心筋の反応、自発波とスパイクの位置関係に注目すると、それぞれの違いを整理しやすくなります。
試験・臨床で混同しやすいポイント
注意したいのは、ペーシングスパイクが出ていないからといって、すべてFailure to Paceとは限らないことです。
オーバーセンシングによって不要な信号を感知し、必要なペーシングが抑えられている場合もあります。
また、スパイクが出ていても、その直後にP波やQRS波が続かなければFailure to Captureとなるため、スパイクの有無と心筋の反応を分けて確認すると見分けやすくなります。
ペーシング不全が疑われたときの対応
ペーシング不全が疑われた場合は、心電図の変化だけでなく、脈拍や血圧、意識状態などを確認し、患者の状態を把握することが重要です。
ここでは、最初に確認したい項目、医療機関で行われる主な対応、緊急性を判断するポイントについて順に説明します。
まず確認したい項目
ペーシング不全が疑われる場合は、まず心電図でペーシングスパイクの有無と、スパイクの後にP波やQRS波が続いているかを確認します。
あわせて脈拍数や血圧、意識状態なども確認し、循環状態に影響が出ていないかを見ていきます。
心電図だけで判断せず、患者の状態とあわせて確認することが大切です。
医療機関で行われる主な対応
医療機関では、心電図やペースメーカーの作動状況を確認し、どのような異常が起きているのかを調べます。
必要に応じて専用のプログラマーを使用し、設定や電池残量、リードの状態などを確認します。
そのうえで原因に合わせて設定の変更や機器・リードへの対応を行い、循環状態が不安定な場合は必要な処置も並行して進めます。
緊急対応が必要なケース
意識障害や著しい徐脈、血圧低下などがあり、十分な循環を保てていない場合は緊急の対応が必要です。
特に反応がない、正常な呼吸がみられないといった場合は、すぐに救命処置につなげる必要があります。
心電図だけでなく症状や循環状態にも目を向け、異常がみられる場合は速やかに対応することが大切です。
ペースメーカーのトラブル(ペーシング不全)でよくある疑問
ペーシング不全については、「一時的な異常なら自然に改善するのか」「ペースメーカーが正常に作動していても症状が出ることはあるのか」と疑問に感じることがあります。
ここでは、ペーシング不全が改善する可能性や、正常作動時に症状が出るケース、トラブルを予防するためのポイントについて順に説明します。
ペーシング不全は自然に改善することがありますか?
ペーシング不全が一時的に見られなくなることはありますが、自然に改善したと自己判断するのは避けましょう。
リードの接触不良や刺激閾値の変化などが原因の場合、異常が断続的に起こることもあります。
症状や心電図の異常が一度でも確認された場合は、医療機関でペースメーカーの作動状況や原因を確認することが大切です。
ペースメーカーが正常でも症状が出ることはありますか?
ペースメーカーが正常に作動していても、めまいや息切れ、動悸などの症状が現れることはあります。
こうした症状は、必ずしもペースメーカーの異常だけが原因とは限らず、ほかの原因が関係している場合もあります。
症状が続いたり繰り返したりするときは、ペースメーカーが正常だから大丈夫と判断せず、医療機関へ相談しましょう。
ペーシング不全を予防する方法はありますか?
ペーシング不全を完全に防ぐことは難しいものの、定期的にペースメーカーのチェックを受けることで、電池残量やリード、設定などの異常を早めに見つけやすくなります。
また、決められた受診時期を守り、電磁波を発生する機器については使用上の注意や適切な距離を確認しておくことも大切です。
めまいや失神、強い息切れなど普段と違う症状が現れた場合は、次の定期受診を待たずに医療機関へ相談しましょう。
まとめ
ペースメーカーのトラブルは、心電図でペーシングスパイクの有無や、その後のP波・QRS波、自発波とのタイミングを確認して見分けます。
ただし、心電図だけでなく、脈拍や血圧、意識状態などもあわせて確認することが大切です。
めまいや失神、強い息切れなど普段と違う症状がある場合は、自己判断せず早めに医療機関へ相談しましょう。定期的なチェックを受けておくことも、異常の早期発見につながります。